Aqoursのライブやhideを“再構築”する試みも 相次ぐイベント&新製品で活況続くVR業界
■Vision Proをかぶり、VRChatのリアルイベントを歩く この土日はひさしぶりに現実世界を練り歩いた。2つの『VRChat』関連リアルイベント『VketReal 2024 Winter』と『VRC大交流会』の視察が目的だ。かたや四度目の開催となる『バーチャルマーケット』のリアルイベント、もう片方は電撃的に開催が決まった新規のイベント。双方ともそれぞれの魅力があり、入場待機列や入場制限が設けられる程度には賑わっていた。 【画像】月ノ美兎のライブやhideのバーチャルアーカイブなど、豪華出演陣が発表に 『サンリオVfes』第1弾出演アーティスト VRプラットフォームである『VRChat』のリアルイベントに人が多く訪れる心理は、事情を知らない人には不思議に思うかもしれない。しかし、実際のところ『VRChat』ユーザーにはリアルでの交流に前向きな人が意外に多い。いわゆるオフ会文化が盛んなのだ。上記2つのイベントは、いわば年末シーズンの巨大なオフ会会場として機能していた。なお、12月21日は上記の2つのイベントが同時開催されている。 秋葉原で開催された『VRC大交流会』は、一般出展即売会と企業展示が集まる昼の部と、事前応募制で招かれた数百人規模の立食交流会が実施された夜の部の二部構成。秋葉原UDXの2階という好立地と、強力なネームバリューを持つクリエイター出展が影響してか、筆者が訪れた開会時点で相当な長さの待機列ができていた。視察できたのは昼の部のみだが、コンパクトで手際のよい運営を見るに、夜の部まで参加すれば実にちょうどいい交流の場として機能したことだろう。 一方、池袋開催の『VketReal 2024 Winter』は、12月22日も含めた2日間開催の大規模イベントだ。サンシャインシティの文化会館に展開する会場には、アトラクション的な企業出展と、飲食ブースつきのステージ、一般出展の即売会が集まっていた。こちらはとにかくコンテンツがパワフルだ。ある種のカオスさも許容するような会場は、体験を通してVRカルチャーへの興味が一気に引き上がるはずだ。無論、こちらも多くの人でにぎわっていた。 双方とも大盛況と言ってよい結果となったが、12月22日の『VketReal 2024 Winter』会場が前日よりも混雑していたのを見るに、来場者は分散していたように思う。しかし、筆者のように双方の会場を行脚した人も多いようなので、「一度に訪れる人が分散した」が正確なところかもしれない。東京全体で見れば、『VRChat』ユーザーがこれほどリアルに集結した日もおそらくないだろう。まだまだ発展途上な業界であることも鑑みれば、来年以降は業界総出のサーキットフェスのような仕掛けがあると面白いかもしれない。 余談だが、筆者は両イベントを『Apple Vision Pro』を常時装備して視察した。ある種の一発ネタではあるが、現場撮影と、とっさのネットや時計へのアクセスなどが、取材行為に使えないかを検証する意図も(少々)あった。 まだ実用的とは断言できないものの、ハンズフリーで撮影ができ、撮影したものが空間ビデオとして記録されるのは、意外と便利でユニークな体験だ。常時録音や、連絡用ツールの常時起動も組み合わせれば、もっと便利でユニークな取材につながるかもしれない。なにより、『Apple Vision Pro』を使って写真を一枚撮ると伝えると、結構ウケがいい。 ■2025年も、『サンリオVfes』がやってくる すっかり年末ムードな『VRChat』業界だが、筆者はすでに来年に視線を向けている。サンリオによるVRイベント『Sanrio Virtual Festival 2025』の開催が発表されたためだ。 前回と同様に、『VRChat』内に作られた「バーチャルピューロランド」を舞台に、アーティストやクリエイター、サンリオキャラクターによるパフォーマンス、パレード、ワールド、コミュニティコラボなど、多種多様な企画が展開される一大イベントだ。今回のテーマは“コラボレーション”とのことで、第1弾出演アーティストのラインナップにもその傾向が反映されている。 出演アーティストは非常に幅広く、サンリオキャラや『VRChat』発アーティストはもちろん、常連となった因幡はねるのほか、月ノ美兎、樋口楓、ムーナ・ホシノヴァ、ぽこピー、夕月ティア、ironmouse、V4Mirai、JKT48Vと、VTuber業界からの出演者がとにかく豊富だ。近しい領域の人物として、P丸様。の姿もある。 さらに驚くべきことに「ラブライブ!」シリーズから「Aqours」が参戦。そして、あのhideが遺した音楽やビジュアルを再構築したメタバース公演『Virtual Reverb: The Creative Echo of hide』まで発表されている。『VRChat』界隈でも、VTuber業界でもないところから現れたビッグネームだ。これで第1弾発表なのだから、まだまだ気が抜けない。 細かなところとして、『VRChat』方面のVRライブ演出を手掛けるクリエイターが、VTuberステージの演出を担当する点も個人的には注目したい。VRクリエイターとVTuber、二種のバーチャルによるコラボレーションはどのような舞台を作り出すだろうか。『Sanrio Virtual Festival 2025』は、2025年2月9日から3月9日の一ヶ月に渡り開催予定だ。 ■Google、サムスンの参戦でにわかに活気づくXRデバイス業界 XR機器もにわかに活気づいてきた。まず、GoogleがXRデバイスOS『Android XR』を発表したのがビッグイベントだ。サムスン製のコード名『Project Moohan』のデバイスも、2025年に発売とのことだ。 そして、国内のVR業界も活況だ。まず、国内のソーシャルVR向けデバイスの雄であるShiftallからは、新型フルトラッキングデバイス『HaritoraX 2』が発表された。『HaritoraX ワイヤレス』ゆずりの小型に仕上げつつ、連続稼働時間や、LiDARによる足首の動き反映など、多くの『VRChat』ユーザーがお世話になった“HatioraX一族”の正統進化として受け入れられそうな手堅い一台だ。 その一方で、気鋭の企業・Diver-Xは非常にユニークな製品を発表した。光学/IMUハイブリッド式トラッキングシステム『ContactTrack』だ。カメラとIMUの共存ができる複合型トラッキングシステムであり、『VRChat』ユーザーの愛用するVRデバイスとの併用も期待できる。同社が発売中のグローブ型デバイス「ContactGlove2」との併用もできるとのことで、VTuber需要にも噛みそうなアプローチである。 VR・VTuberに親和性の高いデバイスが、国内でしのぎを削る状況になりつつあるのは、国内市場の特異性を示しているようである。スタンミによる空前の『VRChat』ブームと、長年温められたVTuberシーンの爆発が、国内XRデバイス市場にどんな影響を及ぼしていくか、まだまだ定点観測の余地がありそうだ。
浅田カズラ