“ぽっちゃり体型の泡姫"の人生を変えた出会い。今では「大会に出場する」までに
ジムに通って最初の半年で「16キロくらい落とした」
現在の伊織さんの代名詞である筋トレソープ嬢への道は、どのように拓けたのか。 「これまでホストクラブへ頻繁に通っていたのですが、“推し”が卒業していくタイミングが重なってしまって。打ち込めるものを探していた時期に、ホストの子から紹介してもらったのが、パーソナルトレーニングジムでした。 最初の半年で16キロくらい落としたので、お客様からは賛否両論ありました(笑)。もともとぽっちゃりしていたので、それがよくて通ってくれたお客様もいたでしょうからね。ただ、私自身が、筋肉のある身体に魅了されたんです。トレーナーにも『私もその身体になれますか?』と質問したのを覚えています」 見違えるような体型を手に入れた伊織さんは、筋トレを通してこんな考え方を学んだという。 「単に見栄えが良くなっただけではなく、私は『自分を大切にしていいんだよ』という教えを得たと思っています。人が筋肉をつけ、痩せていく過程には、当然ですが、“体に良いこと”が必要です。栄養バランスのいい食事、ストレスのない環境、十分な睡眠時間。そんなことはみんな分かっているけれど、日常生活において犠牲にしてきていますよね。それは、自分を犠牲にして、命を摩耗させているんだと気付きました」
父はギャンブル中毒で、母はアルコール依存症
自分を大切に――なかなかそうした境地に至れなかった背景には、伊織さんの生育歴も無関係ではないのかもしれない。 「私の父母は、暴力を振るうような人たちではありませんでした。ただ、父はギャンブル中毒で、母はアルコール依存症でした。思い出すのは、小学生のときに私が痴漢に遭ったことを父に報告すると、彼は『そういうのはお母さんに言って』と言いました。子ども心に、『私には何の関心もないのか』と思いました。2人は私が高校生のときに離婚し、私と弟は母に引き取られています。 その後、私が20代のときに父が孤独死をしました。脳の病気でそのまま亡くなり、放置されたのちに発見されたようです。警察から遺体の写真を見せてもらいましたが、腐敗がかなり進んでいました。ずっとその写真のことは触れないようにしてきましたが、最近、弟と2人で話したとき、弟が『お父さん、溶けちゃったね』と呟いたんです。それが切なくて、でもすごくおかしくもあって、あれから時が進んだんだなと感じましたね。 母は父の死後、アルコールによる肝機能障害で亡くなりました。朝に起きてこないところを、同居の弟が発見したようです。彼女も、アルコールが好きで飲んでいたというよりは、ままならない日常のストレスの捌け口として、飲まなければ眠れないから飲んでいたように私には見えました」