アルファロメオからセアトにVWまで! 凄腕デザイナー「ワルター・デ・シルヴァ」独自の手法と名車5台
日本でもお馴染みの名車も担当
●世界でもっとも美しいクーペセダンを目指す 次は、2002年に移籍したアウディでの初代A5を取り上げます。2007年のジュネーヴモーターショーで発表された同車を直接手掛けたのは日本人デザイナーである和田智氏とされていますが、もちろん当時の統括役としてデ・シルヴァの存在がありました。 クワトロを想起させる前後のフェンダーラインは、エモーショナルでありつつエレガントさも感じさせるもので、美しいショルダー面からリヤフェンダーの張り出しへの流麗な流れなど、磨き抜かれた造形は圧巻です。 A6に準じるシングルフレームも、シンプルなボディに巧妙に溶け込んでいて、決してグリルだけが目立つようなことはありません。先のセアトもそうですが、情緒的でありながら端正でシンプルというのは、もっとも難度が高い造形といえるのです。
●コンパクトカーでも独自の個性を生み出す
デ・シルヴァは2007年にVWグループ全体のデザインを統括することになりますが、その5年後に登場したup!も見るべき点が多いニューカマーと言えます。 デザインコンセプトは「シンプル&クリーン」とじつに明快なもの。前身となるルポも十分シンプルでしたが、それとはまったく異なる個性を創り上げた点がポイントです。 実際、ワゴンタイプの軽自動車と似たようなパッケージでありながら、スマートフォンをヒントにしたリヤガラスやユニークな縁取りのバンパー、丁寧に面取りされたサイド、リヤパネルなどによって次元の異なる存在感を得ているのです。 さて、駆け足で5台を振り返ってきましたが、イタルデザインがVWグループ傘下となったことを考えれば、氏とジウジアーロの関係はずいぶんと長期間に渡っていることがわかります。ただ、互いに高い普遍性を追求しながら、それでもデ・シルヴァのシンプリシティには独自の「動感」が込められているのが特徴といえそうです。
すぎもと たかよし