パナソニック・三菱電機…再生樹脂を電化製品に、背景に危機感
電機大手が廃家電のプラスチックを電化製品向けの再生樹脂にリサイクルする技術開発を進めている。再生樹脂は新品の素材より強度が落ちやすく、パナソニックホールディングス(HD)はセルロースファイバー(CF)を加えて強化する。三菱電機は高強度の製造方法を確立し、自社製品に採用した。欧州では自動車を対象に再生樹脂の利用を促す環境規制が進んでおり、電化製品にも波及するかもしれないという危機感が背景にある。(大阪・森下晃行) 【図解】パナソニックによるセルロースファイバー活用 パナソニックHDは植物系素材のCFと廃家電由来のポリプロピレン(PP)を組み合わせ、強度や難燃性を高めた再生樹脂を開発中だ。家電の新製品などに採用し、環境負荷の軽減を訴求する狙いがある。 CF複合樹脂は「既存の生産ラインに大きく手を加えず製造できる」(パナソニックHD技術部門のマニュファクチャリングイノベーション本部)。グループ内で展開しやすく、数年以内の実用化を目指している。 CF複合樹脂そのものがリサイクルしやすい点も特徴。素材として家電に取り入れた場合、最終的に廃棄・分解しても、近赤外線の反射光を用いれば容易に選別し回収できる。 再生樹脂の活用は資源循環に加えて二酸化炭素(CO2)排出量削減にもつながる。パナソニックHDは「(家電に採用した場合も)競合製品と同等の製品価格を目指したい」としており、CF複合樹脂が新たな付加価値になる道を模索する。 廃家電由来の再生樹脂を、既に製品に取り入れた企業もある。三菱電機はポリカーボネート系アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(PC/ABS)をリサイクルし、光回線終端装置(ONU)の筐体(きょうたい)に採用した。ケーブルテレビ事業者向けとして販売する。 PC/ABSに添加剤を加えて耐久性や難燃性を確保した。再生樹脂はすじ状の模様や黒点といった外観不良が生じやすいが、同社の製造方法は品質がある程度安定していた。そのため、外装への採用に踏み切った。 三菱電機グループ内で廃家電の分解やリサイクルができるため、最終製品に転嫁される値上がり幅を抑えられた。今後は「閉回路テレビ(CCTV)系の製品や、ONUの小物部品などにも再生樹脂を展開していきたい」(三菱電機コミュニケーション・ネットワーク製作所)という。 欧州では使用済み自動車(ELV)規制の厳格化が検討されており、新車生産に必要なプラスチックの25%以上が再生樹脂になる見通しだ。電化製品にも同様の規制が及べば「使用量全体の20―30%を再生樹脂で賄わなければならなくなるかもしれない」とパナソニックHDは説明する。 廃家電由来の再生樹脂は低品質の素材として使うことが多く、電化製品への活用は始まったばかり。特に家電に使う場合は、消費者の抵抗感をどのように減らすかも課題の一つになりそうだ。