5人乗り車で「6人乗れる」理由とは? 子どもを乗せるときの定員計算、法的にはOKでも安全対策が必須なワケ
子どもの安全、定員超過のリスク
子どもが同乗する場合、乗車可能人数が変わることについて説明したが、本来の定員を超えて乗る場合、いくつかの問題が生じることがある。例えば、 ・シートベルトが人数分ない ・チャイルドシートを人数分装着するのがスペース的に難しい などの問題だ。 しかし、道路交通法施行令には「座席ベルト及び幼児用補助装置に係る義務の免除」があり、乗車定員以内であればシートベルトやチャイルドシートが足りない場合、その着用や取り付け義務は免除され、罰則の対象にはならないという規定がある。この法律は 「物理的に足りない場合には着用しなくてもよい」 という内容だが、子どもの安全については十分に考慮されていないともいえる。しかし、この点が広く知られていないのではないかという懸念もある。 警察庁のウェブサイトに掲載されたデータによると、2014年から2023年にかけての「後部座席シートベルト非着用時の致死率(死傷者数に占める死者数の割合)」では、シートベルトを着用せずに事故に遭った場合、高速道路では着用時の 「約25.9倍」 一般道では約3.3倍も致死率が高くなるという結果が示されている。また、チャイルドシートを使用しなかった場合、2019年から2023年の合計で、適正使用者と比べて約4.2倍も高い致死率が記録されている。 そのため、親はシートベルトの着用やチャイルドシートの使用を優先しつつ、乗車人数を考える必要がある。また、子どもを定員より多く乗せる場合は、親が子どもの安全を守るための対策を講じることが求められる。
子どもを守るために必要なマイルール
以前、一児の母である筆者(小島聖夏、フリーライター)は、飲食店の駐車場で8人乗りのミニバンから、小学校低学年くらいの女の子が7~8人降りてくるのを目撃した。付き添いの大人はふたりいたが、子どもたちはみんな似たような体形と髪型をしており、こんなに多くの人がこのクルマに乗ることができるのかと疑問に感じ、印象に残っている。 実際、子どもを含めた乗車定員は、 「(8人 - 2人) × 1.5 = 9」 となり、9人の子どもが乗れる計算だ。ふたりの大人を含めると、合計で11人まで乗れることになるので、法律的には違反ではない。 しかし、違反でないからといって安心してよいわけではない。本当に子どもの安全を守れるのかを考える必要がある。8人乗りのクルマの場合、シートベルトが3本足りない。その状態で、果たして子どもたちの安全が守れるのか疑問が残る。 子育てをしていると、便利さと安全を両立させるのが難しいと感じることがある。便利さを優先したいときもあるだろう。しかし、そのようなときこそ最悪の事態を想定して踏みとどまるべきだ。 「短い距離だから大丈夫」 「安全運転を心がけているから問題ない」 と思っても、何の保証もない。大人数の子どもを乗せる場合は、安全を第一に考え、公共交通を使う、大型車のレンタカーを借りる、あるいはクルマを2台以上で移動するなど、安全策を講じることをおすすめする。 子育て世帯の多くは、普段から自家用車を利用しているだろう。だからこそ、子どもを乗せる際の定員をきちんと把握し、追突事故などのリスクも考慮したうえで、「どの程度の乗車なら安全が確保できるか」を事前に“マイルール”として決めておくことが重要だ。
小島聖夏(フリーライター)