マレーシア機不明で注目 穴だらけの盗難パスポート対策
マレーシアのクアラルンプールから中国の北京に向かっていたマレーシア航空機が8日に消息を絶ち、マレーシア政府は各国とも協力して南シナ海で捜索活動を続けていますが、現在まで機体は発見されていません。また、搭乗者リストに名前が記載された2人の男性が、実は盗難パスポートを用いて搭乗したイラン人男性であったことが判明。搭乗者リストに名前のあったイタリア人とオーストリア人は、過去に東南アジアを旅行した際にパスポート盗難の被害に遇っていました。パスポートの盗難や、それらが実際に別の人物によって使われるケースはどのくらいあるのでしょうか?
日本だけで年間に4万件に達するパスポートの盗難・紛失
マレーシア政府当局者の発表によると、盗難パスポートを用いたのは19歳と29歳のイラン人男性で、北京経由でオランダのアムステルダムに行き、そこからドイツのフランクフルトとデンマークのコペンハーゲンにそれぞれ移動する予定でした。マレーシア政府高官は11日に行った記者会見で、2人がテロ組織と関係している可能性は極めて低いと語り、8日に消息を絶ったマレーシア航空機がテロに巻き込まれたという見方を否定しています。2人のイラン人はヨーロッパ到着後に亡命を申請する予定だったという情報もあります。 パスポートの盗難や紛失は、どれくらいの規模で発生しているのでしょうか?外務省のホームページで紹介されている情報(平成22年度)によると、日本国内で盗難や紛失に遇うパスポートの数は実に約4万件。年間の盗難・紛失件数の約8割が国内で発生していますが、逆に考えると、日本のパスポートが盗難・紛失に遇うケースが海外でも約1万件発生した計算になります。日本以外の国、例えばアメリカではどのくらいの数になるのでしょうか。米国務省の発表では、パスポートの盗難や紛失に関する報告は年間30万件に達しています。多くの人にとって、予想をはるかに上回る数字ではないでしょうか?
パスポートのスクリーニング調査はまだまだ少数派
2001年の米同時多発テロ後にインターポール(国際刑事警察機構)は、盗難や紛失に遇ったパスポート情報のデータベース化を開始。現在までに約4000万件のデータが集められています。日本の空港でもパスポートをスキャンする光景が珍しくなくなりましたが、これはスクリーニングと呼ばれる本人確認で、スキャンした情報がインターポールのデータベースで盗難パスポート情報などと照らし合わされます。 インターポールのデータベースは各国の空港からの問い合わせを受け、年間約8億件のスクリーニングを行っており、アメリカだけで年間2億5000万回のアクセスがあります。しかし、パスポートのスクリーニングは世界中で徹底して行われているわけではなく、むしろ少数派といっても過言ではありません。消息を絶ったマレーシア航空機に搭乗した2人のイラン人男性が持っていた盗難パスポートの情報がデータベースに存在したにもかかわらず、これまで一度もインターポールに照会を求める問い合わせはありませんでした。