誰にも文句を言われたくない――病との苦闘を経て武道館に立つPassCodeの軌跡
当時在籍していた今田夢菜も同時期に身体の不調を抱え、グループは混沌とした状態が続いた。それでも、約1年をかけて南は暗いトンネルを抜け出していく。その過程で、メンバーに頼ることも覚えたという。 「今考えると、高嶋(楓/28)と大上がきっと一番つらかっただろうなって思いますね。私は病気になってから、手にあんまり力が入らないんで、ペットボトルのふたを開けられないんですけど、昔は何時間かけてでも自分で開けなきゃ、と思っていたんです。でも、だんだんメンバーに『ごめん、開けて』って頼れるようになって。それが自分の中で大きかったです」(南)
当時、南は「弱い人間なんだな」と自分を責めたという。 「でも今、過去の自分に話せるならば『休んでいいんじゃない?』って言ってあげたいなって思います。もし同じふうに悩んでる人がいるんだったら、もっと自分を許してあげながら、自分に優しくしてあげてほしいなって思います」(南) そして、2014年からシャウトパートを担いながら、身体の不調と戦い続けてきた今田は、2021年8月に「勇退」という形でPassCodeを去ることになった。緊急事態宣言中の2020年5月にリリースされたシングル「STARRY SKY」は、オリコン週間ランキングで初めて1位を獲得。その勢いに乗り、同年12月には初となる日本武道館公演開催を発表したが、それから約8カ月後の出来事だった。
毎日バイトしてる人が半年後に武道館に立つ
「この4人で走り続ける」と発信し続けていたメンバーたちは、今田の勇退にあたり、それぞれが葛藤したという。PassCodeを続けるか、ここで終わらせるべきか――。精神が衰弱するまで悩んだ結果、彼女たちは「形を変えてでも前進する」という決断をする。そして、南、高嶋、大上は、シャウトのできる新メンバーを自分たちの手で探した。
しかし、踊れてシャウトもできる同年代の女性、となると選択肢は少ない。その候補として浮上したのが、すでにアイドルとしての活動を終了していた有馬えみり(22)だった。2021年8月、彼女はPassCodeに加入することになる。 「決め手は楽曲です。PassCodeの音楽は、そのジャンルの第一線で活躍している海外のアーティストと言われても納得ができるほど完成度高くて……。それが歌えるのであれば、とすぐ決断しました。前任者がいることへのプレッシャーは、前のグループでも前任者がいたなかでの加入だったので、慣れてた感があります。この話があった時は毎日バイトしてたんで、毎日バイトしてる人が半年後に武道館に立つのは不思議な話だなって思いました」(有馬)