誰にも文句を言われたくない――病との苦闘を経て武道館に立つPassCodeの軌跡
そもそも、アイドルとしては異色の存在であるPassCodeは、なぜこれほどまでに人気を拡大できたのだろうか。南の分析は冷静だ。 「PassCodeがこういう音楽に変わったときに、ちょうどBABYMETALが海外で活躍しだした影響もあって、バンドが好きだった方がアイドルに抵抗がなくなってきてライブに来てくださったり、逆もあったりして。市場の交換みたいに入り交じりだした時期だったと思うんです。ダンスを踊ったり、シャウトもしたり、アイドルがこういう音楽を昇華しているところに目新しさを感じてもらって動員が増えたんじゃないかなって思います」
YouTubeのコメント欄には英語のコメントも多く、大上も「なんでなんやろう?」と首をひねる。その変化の兆候は2017年にあったという。 「メジャーデビューシングル『MISS UNLIMITED』以降くらいから、国内外のiTunes リアルタイムチャートで結果が出はじめて……各国でiTunesのチャートで1位みたいな感じで、『どういうこと?』って不思議な気持ちになりました」(南) さらに2019年以降は、「一か八か」がドラマ「賭ケグルイ season2」(TBS系)と映画「賭ケグルイ」のオープニングテーマに使用され、PassCodeの音楽はお茶の間にも届いていくことになった。
「弱い人間なんだな」と自分を責めた
順調にキャリアを重ねてきたPassCodeだが、そこにはいくつもの苦しみがあった。ひとつは、南が2017年にうつ病を発症しているという診断を受けたことだ。PassCodeでスポークスマンとしての発言を任されることが多かった南は、グループがシーンで存在感を増していく一方で、精神面では追い込まれていた。当時の環境によるストレスで、自律神経の失調に襲われてしまう。 「2017年の夏あたりだったような気がします。何をしてても涙が出てきて。最初は『もっとしっかりしないと』って思ってて。でも、特に家にいてぼーっとしているときに涙が止まらないし、ずっと不安で、1カ月ぐらい経ってからやっと病院に行ったら、うつと診断されました。その1カ月後ぐらいからツアーが始まったんですけど、初日にまったく声が出なくなってしまって」(南) 「死にたくなるというか、全部がそういう方法に見えるっていうほうが私は近かったです」(南)