クルマ好きならみんな一度は使う「セーム革」! でもちょっと待て……セームって一体何?
みんなが使う「セーム革」ってそもそもなに?
昭和のカーマニアなら必ず使っていた洗車用品のひとつが、天然セーム革だった。当時、すでに合成セーム革の代表格として、三菱鉛筆(株)が販売していた、今では製造中止となりプレミア価格(!?)がついているオランダ製の「ユニセーム」もあったのだが、カーマニアの間では、ホンモノ感ある天然セーム革が人気だった。筆者もかつて武蔵ホルトが販売していた天然セーム革を「ユニセーム」とともに愛用していたものだ。 【画像】コイン洗車場で濡れたクルマのボディをセーム革で拭き上げている様子などの画像を見る その”セーム”とはなんぞや、だが、オランダ語の「zeemsleer(ゼームスレール)」=セーム革に由来している。オランダ語のゼームがセームになったわけだ。昭和の時代からつい最近まで、カーマニア、洗車マニアに愛されてきた三菱鉛筆、後にユニ工業の合成セーム革である「ユニセーム」がオランダ製であることも、その証明ではないだろうか。 元々、セーム革は天然のもので、天然セーム革は時計、宝飾品、眼鏡、ハサミなどを手入れするためにも使われていた。主に鹿の皮をなめしたもので、形は天然皮革だけに四角形ではないものもあるとはいえ、柔らかく、微細な穴が開いているため、塗装面に優しく、吸水性がそこそこ高く、水洗いしても、乾いても、硬くならない性質を持っている。つまり、天然皮革だけに高級品で、今でも黒塗りハイヤーの運転手にも愛用され続けているはずの逸品なのである。※現在はあまり需要がないので、1000円程度でも売られている。
セーム革のメリットとは
しかし、天然セーム革は洗車の拭き取り用クロスとして、もはや過去のものになっているといっていい。そう、現代的かつ耐久性にも優れた合成セーム革や、おなじみのマイクロファイバークロスにその座を奪われてしまったのだ。 合成セーム革は、別名、スポンジクロスとも呼ばれ、素材はPVAスポンジ。色付けしやすく、さまざまなカラーが発売され、価格も廉価。代表格として今は販売されていない「ユニセーム」などがあり(オランダの工場が閉鎖されたらしい)、めったにないパンチング素材の「ユニセーム」は吸水性、保水性に優れ、ケース入りのため、しまっておいても硬くなりにくい性質を持つ(そうでない合成セーム革もある)。 筆者は昭和の時代からもう何十年も使い続けているが、当時の物も今だに健在。洗車後、大きく広げてボディに乗せ、スルスルと引っ張るボディに優しい圧をかけない吸水方法にも向いている。ただし、すべての合成セーム革が洗車後の吸水性に優れているわけではない。やはり、定評ある合成セーム革の使用が望ましい。 ちなみに、筆者は昔、国内で手に入るほぼすべての合成セーム革を購入し、テストしたことがあるのだが、吸水性、保水性がイマイチの合成セーム革は、ホイールやエンジンルーム用に2軍落ちさせて、使わせてもらっている。もし、イマイチな合成セーム革を買ってしまっても、捨てないでそうした使い方をするといい。 クルマの洗車はもちろん、家庭用としても普及しているマイクロファイバークロスは、ナイロンやポリエステルの極細かつ多角形繊維でできたもので、吸水性、保水性、速乾性、集塵力に優れ、大きく広げてボディに乗せ、スルスルと引っ張るボディに優しい吸水方法にも最適。こちらも廉価で販売され、100均でも売っているが、じつは、洗車用として見ると、こちらも合成セーム革同様に性能はピンキリ。 洗車後の水気の拭き取りに使う場合は、筆者もユニセームとともに愛用している、キーパーのコーティング車にも対応する「コーティング専門店の拭き上げ用クロス」=マイクロファイバークロスのような、キーパー、キーパーラボの洗車、コーティング現場でも使われている高品質なものをお薦めしたい。 実際の洗車後の水気のふき取りで、吸水性、保水性、ボディへのやさしさはハイレベルだと感じている。それでも色違いの2枚入りで1180円程度である(キーパー公式オンラインショップ価格)。1枚をボディ用、もう1枚を足まわり用などとして使いわけることができ便利だ。
青山尚暉