相続放棄したのに請求がきた! 債権者による取り立てへの対処法
3. 相続放棄をする前に請求がきた場合の対処法
相続は突然発生するものなので、亡くなった人にどんな財産や債務があるか、相続人が把握していない場合も多いです。債権者からの請求によって、遺産に借金が含まれているのを知ることもよくあります。 自分が相続人になった場合には、亡くなった人にどんな財産があるかだけでなく、どんな債務があるかについても、よく調べておくようにしましょう。亡くなった人宛の郵便物や、預金通帳の取引履歴などから、債務の手がかりを見つけることができるケースもあります。 なお、相続放棄をする前に、債権者から請求を受けた場合であっても、相続放棄をすることは可能です。ただし、相続放棄は「被相続人が亡くなったことと、自分が相続人であることを知ったときから3ヶ月以内」にしなければなりませんので、この期間には十分注意しましょう。
4. 相続放棄をしても借金を返済する必要があるケース
相続放棄をしても、借金を返済しなければいけないケースもありますので、注意しましょう。 4-1 亡くなった人の借金の連帯保証人になっていた 相続人が、亡くなった人の借金の連帯保証人になっていた場合には、相続放棄をしたとしても借金を返済する必要があります。 なぜならば、相続人自身が亡くなった人の連帯保証人となっている場合には、自己の連帯保証債務として借金を支払う義務を負うからです。この場合には、相続放棄をしたとしても、連帯保証人としての返済義務を免れることはできません。 4-2. 正式な手続きをしていない場合 相続放棄をするためには、被相続人が亡くなった後、亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければなりません。 中には「他の相続人に、相続放棄をする、と伝えたので相続放棄をしたものだと思っていた」「兄弟で、兄が遺産を取得し、弟である自分は何ももらわないということで、話はついているので、相続放棄をしていると思っていた」などというケースもあります。しかし、相続人同士で話し合っただけでは、正式な相続放棄とは認められません。 また、「生前に遺留分を放棄する旨の手続きを裁判所に対して行っているので、相続放棄は行わなくてもいいのではないですか」という質問をお受けすることもありますが、遺留分の放棄の許可と相続放棄の申述は全く別の手続きです。遺留分放棄の許可は、亡くなった人の生存中に、亡くなった人の住所地の家庭裁判所に対して申立てをすることで、あらかじめ遺留分を放棄することができる制度のことです。 従って、仮に、遺言によって全財産が他の相続人に相続されることになったとしても、遺留分放棄者である法定相続人は、亡くなった人の負債を相続することになります。そのため、遺留分放棄の許可を受けている相続人であっても、亡くなった人の死後に、改めて相続放棄の申述を行う必要があります。 4-3. 相続放棄が無効な場合 家庭裁判所に相続放棄の申述を行って受理された場合でも、実際には相続放棄の要件を満たしていなかったという場合には、相続放棄が無効だと判断される場合があります。 下記のようなケースでは遺産を相続したと見なされます。 ・相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき ・相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったとき ・相続人が、限定承認又は相続放棄後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録に記載しなかったとき そのため、相続放棄をする前に、亡くなった人の財産を処分してしまっていた場合には、相続について単純承認をしていたと判断される可能性があります。相続放棄をした後に、亡くなった人の財産を隠匿したり、自分のために消費してしまっていたりというような場合でも同様です。 4-4. 民事訴訟を起こされ裁判で負けた場合 債権者が相続放棄を無効だと考える場合には、相続放棄をした相続人に対して「亡くなった人の債務を支払え」という民事訴訟を提起してくる可能性があります。 この場合には、その民事訴訟手続きの中で、相続放棄が有効か無効かが判断されます。相続放棄が無効であると判断され、債権者の請求が認められた場合には、相続人は亡くなった人の債務を相続したとして、債権者に対して借金を支払わなければなりません。