掛布チルドレンは、なぜ1軍から消えたのか?
オープン戦も終盤を迎えている。私は、昨秋から阪神のGM付育成&打撃コーディネイターとして、若手選手の育成を微力ながらお手伝いさせてもらっていて、何人かの若手、中堅選手は、マスコミの皆さんに、“掛布チルドレン”と命名してもらい期待をかけていただいた。私は誰が“掛布チルドレン”で、誰が“掛布チルドレン”でないのかも、よくわからないが、若手選手の中で、現在、開幕1軍争いに残っているのは、2年目の緒方凌介、ルーキーの梅野隆太郎くらいだ。 伊藤隼太や、森田一成、中谷将大、一二三慎太、北條史也らは、首脳陣が「上に残す」という判断を下すまでの結果を残せなかった。中谷、一二三、北條らは、現在、日々、成長しているが、まだこの春から一軍で勝負する力は足りないと思っていた。 だが、隼太に関しては、マートン以外では、確定していなかった2つの外野のポジションを最後まで争うことができるという期待はあった。森田に関しては、肩の問題があって、一塁しか守れないというハンディがあり、しかも、そこに新外国人のゴメス、新井兄弟といるため、首脳陣の目を留めるには、相当の数字とインパクトが必要だと思っていた。隼太も森田も、オープン戦で打つには打ったが、数字もインパクトも物足りなかったということだろう。 古い話で恐縮だが私は、ルーキーイヤーに1軍に残してもらったとき、オープン戦で4の4のゲームを含め18打数8安打の数字でインパクトを作った。そういう爆発力のような勢いを彼は見せることができなかった。 “掛布チルドレン“は、なぜ1軍から消えたのか? 実は、まったく消えていない。生き生きと力を蓄えつつあるのだ。これは、私の贔屓目ではなく、隼太も森田も、昨秋から比べて間違いなくレベルアップしている。隼太はバットのトップの形やタイミングを崩されずレベルに体を使うというテーマに取り組んできたが、彼の野球に対する姿勢と意識の高さが、“地道な継続”というものに変わり、着実な力となっている。守備に関しても安定感も出てきた。 森田に関しても、ボールを遠く飛ばそうという意識が強すぎて、テイクバックで脇が空くという悪い部分が出ていたが、そこも2軍に来てからは修正ができている。 これは、中谷、一二三、北條らにも言えることだが、上手くなりたい、プロの世界で成功したい、というモチベーションの高さをヒシヒシと感じる。私は、プロの指導者は、選手を「やる気」、「その気」にさせることが、大切なキーワードだと考えている。スカウトのシステムが整備され、アマチュアのトップレベルの素材を持った選手が集まっているからだ。彼らがやらされているのではなく、自分から主体的に考えるという習慣を身につければ、それは絶対にプラスに働き、結果につながる。その主体性や、考えるという習慣が、“掛布チルドレン”と言われる選手たちには、出来つつあるのだ。