おぎぬまXのキン肉マンレビュー【コミックス第36巻編】~ジャンプ時代最終巻! キン肉マン、フェニックスが何度でも立ち上がるのは誰のため?~
しかも、追い打ちをかけるように登場するフェニックスの母、シズ子です。母親に改心するように説得され、わずかに心が揺らぎますが、それでも不死鳥は王の座をあきらめません。キン肉マンの兄である、あのアタルも苦しめた超人牛裂き刑レイジング・オックスをここで発動! 江戸時代の罪人処刑法を超人プロレス技へと発展させたという発想の泉から湧き出てきたようなこの技が、このクライマックスで飛び出してきたのがまたニクい。 ここへ来て追い込まれたキン肉マンを最後に支えてくれたのは、彼がこれまで最も大事にしてきた仲間たちでした。大阪城へ応援に駆けつけた仲間がズラリと見開きで描かれるシーンは圧巻の一言! そして彼らの声援のみならず、キン肉アタル、ジェロニモ、ロビンマスク、ネプチューンマンといった死んだ仲間たちまでもがキン肉マンのために動くのです。 この世ではない邪悪大神殿にたどり着いた彼らの力で、封印されていたキン肉マンの火事場のクソ力が解放! キン肉マンは見事、完全復活を果たしました! 「長かった戦いよさらば!!」 この名言とともにキン肉マンは最後の奥義、マッスル・スパークを決めて圧倒的な無敵感でフェニックスを撃破。ミラクル、ラッキー、これまで幾度もささやかれてきたそんな単語は何ひとつ浮かばない、ラスボスへの完全勝利で最後の闘いを終えたのです。 その余韻のまま、後日談すらなくリングの上でフェニックスを抱きかかえて終わるラストシーンのなんと詩的にして潔く爽やかなこと。第1巻の時点でこのラストを想像できた人がいたでしょうか。それなのに......とてもこの作品らしい! 不思議とそう思える最高の終幕だと思います。 最後に、昨今の少年漫画は、ラスボスを倒した後の平和となった世や、登場人物のその後を描く、いわゆる後日談で締めることが多いですが......なぜ『キン肉マン』ほどの超大作がエピローグを描かずに終わったのでしょうか。 これは僕の推測でしかありませんが、祝賀会やド派手な凱旋パレードなんて始めたら必ずそこにまた新たな敵が現れてしまうからではないでしょうか。永遠に闘い続ける、それが『キン肉マン』という作品なのだから......。そんな想像にも思いを馳せつつ、第1期の最終巻、この36巻レビューをここに終えたいと思います!(涙)*37巻以降もレビューしていきます! ●『キン肉マン』4コマ ●こんな見どころにも注目! この巻は、どうしてもキン肉マンとフェニックスの動向だけに目が行きがちですが、その中にあって僕がホロリとせずにはいられないのがこのオメガマン最期のシーン。ホンの少し前の第33巻レビューで語らせていただいたように、僕はオメガマンという超人が大好きなのですが、キン肉マンを倒すべく現れた最後にして最強の刺客とあれだけ鳴り物入りで出てきた彼が闘いの中で逝くでもなく、まさか予言書を燃やされ消滅していくだけのこんな哀れすぎる切ない最期を迎えるだなんて......。短いシーン、小さなコマではありますが、ここも間違いなく僕の脳裏に強烈に刻まれた名場面でありました。 ●おぎぬまX(OGINUMA X)1988年生まれ、東京都町田市出身。漫画家、小説家。2019年第91回赤塚賞にて同賞29年ぶりとなる最高賞「入選」を獲得。21年『ジャンプSQ.』2月号より『謎尾解美の爆裂推理!!』を連載。小説家としての顔も持ち、『地下芸人』(集英社)が好評発売中。『キン肉マン』に関しては超人募集への応募超人が採用(JC67巻収録第263話)された経験も持つ筋金入りのファン。ミステリ小説シリーズ『キン肉マン 四次元殺法殺人事件』、『キン肉マン 悪魔超人熱海旅行殺人事件』が好評発売中 漫画/おぎぬまX 構成/山下貴弘 ©ゆでたまご/集英社
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