おぎぬまXのキン肉マンレビュー【コミックス第36巻編】~ジャンプ時代最終巻! キン肉マン、フェニックスが何度でも立ち上がるのは誰のため?~
●ラスボス渾身の告白を、告白返しで潰す残酷さ まず、フェニックスが繰り出したのはキン肉マンと同等の王の証"フェイス・フラッシュ"。続けて邪悪神の力を借りて繰り出してきたのが、キン肉族三大奥義"マッスル・インフェルノ"。あえて彼は、次々と新たな"王の証"を繰り出し、不死鳥のごとく取り戻し、何度でも蘇ってはキン肉マンの前に最後の壁として立ちはだかってくるのです。キン肉マンもそれに負けじと応戦してきます。 まさに炎の逆転ファイターVS邪悪なる不死鳥。しかし、その不死鳥のごときフェニックスの闘い様は、実はこれまでキン肉マンが散々、他の悪の超人たちに向けてやってきたことのようでもあって、やはりこのふたりは同じ日に生まれた運命のライバル。似た者同士であるという思いも感じずにはいられません。 しかし、キン肉マンが何度も立ち上がるのは他者のためであり、フェニックスが何度も立ちあがるのは己のため、その違いだけは拭(ぬぐ)いようがないんですよね。そこが如実に描かれるのが、その後のフェニックスの出生の告白。貧しい家に生まれ、幼き日からキン肉マンとの待遇の差に抱き続けた人生の恨みつらみの数々です。 しかし、これを聞いたキン肉マンは、その恨みを圧倒的に凌駕するほどの壮絶な幼少期を語ります。幼き日にブタと間違われて地球に捨てられ孤児になり、人間たちにいじめられながら、それでも人々を恨むことなく強くたくましく生きてきた。恵まれない生い立ちを盾に悪行を正当化してきたフェニックスを黙らせる完璧なアンサーです。 少年漫画では、悪役が悪の道に走った理由が明かされ読者の共感や同情を得る、というのは古今東西、様々な作品でやられてきたことだと思います。しかし、その悪役以上に"悲しい過去"を主人公が背負っていたとしたら......? 怒りや恨みをパワーに変えてきた悪人がヒーローに絶対勝てない理由がここにあります。 もはや、"少年漫画"のアンサーともいえることをキン肉マンは教えてくれました。しかも初期にはギャグとしてコミカルに描かれてきたエピソードの数々が、最終所のラスボス・フェニックスを黙らせる最強のアンサーとしてぶちかまされた! いやはや、やはり『キン肉マン』は恐ろしい作品です。こんな神がかった展開をやられてしまったら、もはやフェニックスは立つ瀬がありません......。
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