おぎぬまXのキン肉マンレビュー【コミックス第36巻編】~ジャンプ時代最終巻! キン肉マン、フェニックスが何度でも立ち上がるのは誰のため?~
そうなんです、フェニックスは記録に残る経歴だけを見ると、大きな失敗や汚点もなく、とても綺麗です。王という地位を得る上ではむしろ、フェニックスのほうがクリーンで適格なのではないかと思えるほどです。では、フェニックスの経歴はなぜそれほどまでに綺麗なのか......? それは汚いものをすべて切り捨ててきたからです。土が付きそうなもの、自分を裏切りそうなもの、醜(みにく)くなったもの、用なしになったもの、すべて自身が実害を被(こうむ)る直前に切り落として清潔を保ってきたのがフェニックスのクリーンさの正体なのです。 一方のキン肉マンは、救いを求める者をどんな状況でも決して切り捨てやしません、すべてを受け入れる。傍(はた)から見れば、その姿がドジでマヌケに映ることもあるでしょう。味方だけならまだしも、なぜ敵にまで情をかけるのかと首を傾(かし)げられることもあるでしょう。 人生の評価が減点方式なら、王にふさわしいのは、より失敗をしてこなかったフェニックスなのかもしれません。しかし、今......最終決戦の舞台となったここ大阪城には、かつてキン肉マンの前に立ちはだかった数々のライバルたちが駆けつけています。 一方、フェニックスの背後には自信を傀儡(かいらい)にしようとたくらむ邪悪の神たちの姿しかありません。 フェニックスはそんなキン肉マンの堂々とした振る舞いを目の当たりにして、本当に王にふさわしいのは自分ではなく、キン肉マンなのではないかとまで心の中で自問自答し始めます。 そこへ邪悪五大神が結託、なんと全員がフェニックスに力を貸すというまさに最終手段に打って出て、究極のパワーアップを果たすのです。 思えば『キン肉マン』という作品は、これまで主人公であるキン肉マン側は常に挑戦者側で、怖い相手に勇気を振り絞って立ち向かっていくという作品でした。しかし、今や立場は大逆転。キン肉マンの強さに恐れをなしたラスボスが神々の力を借りて挑んでくるのです。完全に主人公とラスボスの役割が逆転してしまいました。ついにキン肉マンもここまでたどり着いたんだと、これまでの長い道のりを感じずにはいられない感慨深い演出だと思います。 ややもすると、次第に追い詰められていくフェニックス側を読者も少し応援したくなってくるような絶妙な最終展開。そんな流れに拍車をかけるように、ここから先は挑戦者フェニックス視点で語られていくことが多くなっていったようにも思います。
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