再開店舗に無償でデザイン 津幡の杉野さん、アートで復興支援
コロナ禍を機にホテルマンからイラストレーターに転身した杉野有さん(46)=津幡町竹橋=が、能登半島地震の被災地で営業を再開した店舗のデザインを無償で手掛けている。看板や広告を制作し、誰でも自由に使える自作のデザインも提供している。杉野さんはアートを通じて復旧・復興が進む被災地の現状を全国に発信し、支援の輪を広げようと意気込んでいる。 杉野さんは県内の高校卒業後、ホテル運営などを手掛ける金沢市内の企業に就職。複数の宿泊施設で総支配人を務めた。新型コロナの影響で施設が閉店したことを受け、趣味のグラフィックの技術を生かして3年前からイラストレーターとして活動している。 地震後、知人が被災地に物資を搬送するのを見て、自分も能登のために何かできないかと考え、営業を再開した店舗にデザインを無償で描く活動を始めた。 杉野さんが手掛ける「ウインドーサイン」は、店舗の壁面や窓ガラスにポスターカラーで絵や文字を描き、季節の変化などに応じてデザインを変更することが可能。これまでに輪島市内のレストランや志賀町増穂浦海水浴場に設置されているアヒルボート券売機のサインを施した。 杉野さんのデザインを用いて商品を製作・販売し、売上金を被災地の支援活動に充てる「アートプロジェクト」もスタートした。プロジェクトのインスタグラムでは杉野さんのデザインが使われたグッズの紹介、被災者や支援者へのインタビューが掲載されている。 地震から8カ月以上が経過し、杉野さんは震災の記憶の風化が懸念されるとし「アート作品やプロジェクトをきっかけに被災地の現状や支援の必要性を知ってもらいたい」と話した。