犬の消費者向け遺伝子検査がブームに、「覆面調査」で信頼度を検証してみた、米国
犬種とは「驚くほど複雑な問題」
「犬種は驚くほど複雑な問題です」と、この研究を主導した米スミス大学計算機科学科のヘイリー・ランドー助教は言う。広く受け入れられている犬種はDNA分析が登場する前の時代に定義されたものであり、遺伝子検査の結果は飼い主の考えとは相容れない場合があると指摘する。 ミックス犬の遺伝子検査については、また別の問題がある。遺伝子検査サービスは、犬種があらかじめ特定されているイヌの遺伝子の情報に依存しているからだ。 「消費者が信用してよいのは、透明性が高く、多様なDNAパネルを持っている検査会社です」とグリーン氏は言う。氏は消費者に対し、検査会社とその検査内容についてよく調べてからサンプルを提出すること、そして、ミックス犬がどの犬種の血をひいているかを知りたいなら、検査会社が使うDNAの情報に、自分が予想する犬種が含まれていることをしっかり確認するよう勧める。
「犬種と性格」は当てにならない
愛犬の犬種について正確な情報が得られたとしても、その行動(性格)には、あなたが考えているほどの一致はないかもしれない。2022年に行われた2000匹以上の純血種とミックス犬の遺伝子分析では、イヌの行動特性は個体差が大きく、「この犬種はこういう性格」という俗説はあまり当てにならないことが明らかになった。 近年、特定の犬種を危険なものとして飼育を制限する傾向が高まっていることを考えると、消費者向けの遺伝子検査サービス市場が広がると、犬種に関する固定観念が永続化するおそれがある。ランドー氏とグリーン氏は、消費者向け遺伝子検査サービスは、人々の住居や保険加入の選択、さらには、条例で飼育が禁止されたり保険で不利になったりする犬種との暮らしにかかわる意思決定に「社会的・経済的な影響」をもたらすだろうと予想している。 「愛犬について知るのは楽しいことです」とランドー氏は言う。けれども、今日の遺伝子検査サービスは始まりにすぎないと付け加える。娯楽的なものから重大な結果をもたらすものまで、イヌのDNAが私たちに何を教えてくれるはまだわからない。
文=Erin Blakemore/訳=三枝小夜子