軍用機領空侵犯“番外編”…「歴史問題」で反撃に出る中国
■中国にとっても利益にならない 歴史問題から離れるが、このフィリピン駐在の中国大使は反論の中で、福島第一原発の処理水問題も槍玉に挙げている。「日本はなぜ、人々の命や健康を無視し、太平洋を下水道とするのか? 福島から汚染水を排出することで、近隣諸国の懸念を無視しているのか? 説明してほしい」と。 そして、南シナ海でのフィリピンと中国の摩擦について、「中国が国連海洋法条約の規定に基づいていないというなら、福島第一原発の処理水問題は、海洋法条約に違反している。ダブルスタンダードでしょ」と言うわけだ。 きょうは中国軍機の領空侵犯から、中国が歴史問題を取り上げ、反撃に出てきた、という私の見方を紹介した。かつて日本軍が製造した化学兵器の話。フィリピンへの過去の侵略・残虐行為を持ち出すのは、領空侵犯事件と連動しているように思える。 中国の対日外交を振り返ると、歴史問題は強弱、濃淡はあれ、日本への外交カードであり続けた。我々は過去の歴史から目を背けてはいけないが、あまり関係のないテーマで、持ち出されると、日本人の対中感情はどのようになるか。中国にとっても利益にならないのではないか。 ■◎飯田和郎(いいだ・かずお) 1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。
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