“避妊なし”の性交渉はなぜ起こる?心理面で男女間に大きな差 既婚者でも「気が乗らない」まま行為を半数以上が経験
■避妊したがらない男性「リスクある要求を受け取らせて自分の存在価値を認めている」
前述のジョイセフ調査では、男性の避妊しない理由も集計している。こちらは1位が「快感が損なわれるから」、2位が「盛り上がって忘れてしまった」、3位が「しなくて大丈夫だと思った」との結果だった。 クノタ氏は、かつて女性と避妊せず、性行為を行った経験がある。「自分の本心を抑圧して、社会に適応しようと一生懸命だった時代に、自己嫌悪になった。女性にリスクある要求を受け取ってもらって初めて、自分の存在価値が認められるような心理状態」と振り返った。 また、「人生の後半でバイセクシュアルだと自認して、初めて受け入れる側の心理を掘り下げた」という。「男性は性衝動と、その心理に無自覚だ。男性同士の“性の会話”は、おふざけや自己顕示になりがちだが、性的欲求は根源的な心理を表している。男性を性衝動から自己カウンセリングにまで進められれば良いと感じる」と説明した。 小野氏は「ジェンダーギャップは、女性差別の問題だけでなく、男性にも関わっている」と指摘する。「男性は若い頃から、性に関する相談相手がいない。女性は半数近くが母親に相談しているが、男性は半数以上が自分一人で悩む。それが、年齢が高くなるにつれ、男性の自殺率にもつながると考えている」。 男性器へ着用するコンドームに、避妊を頼っていることも背景にある。「男性主導で避妊を任せていることが、女性が『相手に言いづらかった』理由になっている。男性は『快感が損なわれるから』を理由に挙げていて、女性も快感を得てもいいはずなのに、避妊に関しては受け身になっている」と加えた。
■夫婦間にも避妊の問題“多産DV”につながるケースも
どちらかが性交渉に乗り気でない場合もある。ジョイセフの「性と恋愛2023『性・セックスの意識』」調査によると、15~29歳のうち、既婚者(1311人)の56.8%、未婚者(4489人)の33.3%が「気が乗らないのに性交渉に応じた経験がある」と回答した。 NPO「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星氏は、「性暴力であると認識した上で行為に及ぶ人々」の存在が問題だと指摘する。「夫婦間で避妊拒否すると、『多産DV』が起き得る。これは性的DVとして認められているが、暴力行為だとわかっているからこそ、相手を服従させる手段として選ばれている現状がある」。 これまで小野氏が出会ってきた女性も、「結婚したら受け入れなければいけない」と感じている傾向があった。「自分が気乗りしなくても、夫からの求めには答えなければいけないと思っていた」。
■男女で異なる性交渉への向き合い方とは
リスクを冒すことで、愛情を感じる人も存在する。クノタ氏は「暴力性に基づいて性行為をすると、男性も自己嫌悪になる。『自分自身が傷つく』と、男性が気づくことが大事なのではないか」と分析する。 大空氏も「避妊具を使わないと、男性も性感染症に感染する可能性があり、身体的リスクがともなう」と語る。「最近は『他者的な権利擁護』ばかりが言われがちだが、自分も相手も、互いに自己決定権を有して、初めて対等な立場になる。『強い男性は、弱い女性に優しくしなくては』ではなく、互いが対等だからこそ、権利擁護の意識を持たなくてはいけない」。 (『ABEMA Prime』より)