史上初めて女性の男子ツアープレーヤーとなった寺西飛香留 〝二刀流〟を志す原動力とは?
【若手記者コラム】男子に交じって戦う一人の女子選手の姿があった。男子ゴルフ「パナソニック・オープン」のマンデートーナメント(主催者推薦選考会)に出場した寺西飛香留(ひかる)だ。8月に行われた国内男子ゴルフの来季ツアー出場権を懸けた1次予選会に女子選手として初挑戦して49位に入り、史上初めて女性の男子ツアープレーヤーとなった24歳。主催者推薦選考会の結果は102位で本戦出場権獲得には届かなかったが、「男子のコースセッティングに身を置けることはあまりないので、めっちゃ楽しかったです」。競技後、取材に応じた際の目は輝いていた。 父の勧めで4歳からゴルフを始めた。高校はゴルフ部がない和歌山・高野山高に進学。個人で活動しながら技術を磨いた。なかでも注力したのは飛距離の向上だ。「元々飛ぶ方ではなかったので、飛距離を伸ばしたいと思っていた。いったん自分のリミッターを外して、重いクラブを思い切り振ることを徹底していました」。その取り組みが実り、ドライバーの平均飛距離は女子ではトップクラスの約270ヤードまで成長した。マンデートーナメントのコースの総距離は7110ヤード。通常の女子ツアーより約500ヤード長かったが、男子と同じティーの位置から2バーディー、4ボギーの74で堂々と回った。 中学2年時には、男子の国内メジャー「日本オープン」の地区予選に出場した経験を持つ寺西。異色といえる〝男女二刀流〟の挑戦を続ける原動力となっているのは、純粋な〝好奇心〟だ。「今回のコースはラフが長かったり、グリーン周りにティフトン芝が入り交じっていて、どうやって対応するか考えるのがすごく楽しかったです」。取材の中で何度も「楽しかった」と口にする姿が印象的だった。 とはいえ、女子選手が男子ゴルフの世界に飛び込むのには「勇気がいります」と話す。男子ツアープレーヤーの権利を獲得した8月の1次予選会では、「はじめはすごく視線を感じました」。同会場では関係者と勘違いされて男子ロッカーの鍵を渡されるハプニングもあったという。それでも、「男子も可能なら挑戦してみたい、やってみたいという気持ちだけです」と熱が冷めることはない。 直近の目標は、今月末に行われる日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の最終プロテスト合格。その直前の22日には、男子ゴルフ「カシオワールドオープン」の主催者推薦選考会への出場も決まった。「今後も可能なら男子ツアーにも出ていきたい」。好奇心旺盛な寺西が、唯一無二の道を開拓する。(鈴木和希)