GitHubのCOOが登壇、IoTやプログラミング教育などソフトウェア開発のサポートについて紹介
米GitHubは年次イベント「GitHub Universe 2024」を、米国サンフランシスコにて10月29日~30日(米国時間)に開催した。 【画像】GitHub Universe 2024 2日目基調講演 2日目の基調講演「Building 1 billion developers(10億人の開発者を作る)」には、GitHubのCOO、Kyle Daigle氏が登壇。IoTやプログラミング教育など、さまざまな分野でのソフトウェア開発のサポートについて紹介した。 「1 billion developers」という言葉は、初日基調講演で「GitHub Spark」が発表されたときにも使われた言葉だ。Daigle氏は、現在ではソフトウェア開発者になる道は一つではなく、エンタープライズ開発者から個人の小さいプロジェクトまであること、そしてさらにGitHub SparkのようにAIによってアイデアを実現できるようになることを語った。 ■ 最も多くのコントリビューターがいるプロジェクトは「Home Assistant」 GitHub Universe 2024にあわせて、GitHubの年次統計レポート「GitHub Octoverse 2024」も発表されたことを、Daigle氏は紹介した。 この中で、「最も多くの初コントリビューターを集めたプロジェクト」においてVSCodeに次ぐ2位に、「最も多くのコントリビューターのいるパブリックプロジェクト」においてVSCodeを抑えて1位になったのが、「Home Assistant(home-assistant/core)」だった。 Home Assistantは、Raspberry PIなどで動くホームオートメーションの管理ソフトウェアだ。GitHub上にてhome-assistantプロジェクト全体で8万3000のスターを集め、5000人がプルリクエストを提出しているという。 Home AssistantのPaulus Schoutsen氏とFranck Nijhof氏が登場し、ダッシュボードやカスタマイズの概要などを、デモをまじえて説明した。また、Home Assistantコミュニティと、クラウドサービスNabu Casa、非営利団体Open Home Foundationによるエコシステムについても紹介した。 ■ GitHubの開発ツールの最新動向を紹介 続いてDaigle氏は、GitHubも創立から16年がたち、さまざまなツールが用意されていることを紹介した。 □GitHub Actionsのアップデートや、IssueOpsの紹介 中でも2018年に登場したGitHub Actionsは、成長を続けており、さまざまな自動化に利用されている。今回も、GitHub Actionsのランナー(サーバー上で自動化のジョブを実行するエージェント)や管理ツールのアップデートがアナウンスされている。 基調講演では、ARM版のランナーがパブリックリポジトリで無料にて利用できるようになったことが紹介された。 また、GitHubのIssueやプルリクエストを起点にGitHub Actionsで自動処理するIssueOpsについても紹介した。デモではIssueにて、タイムライン表示や、スイムレーン表示、さらにIssueを階層化するsub-issueの機能(10月にパブリックベータとしてリリース)が紹介された。 □Copilot Autofixを使ったセキュリティキャンペーン機能の発表 セキュリティの面では、脆弱性の修正をAIが提案するCopilot Autofixが、8月にGitHub EnterpriseのGitHub Advanced Security(GHAS)で一般提供を開始。9月にパブリックリポジトリでCopilot Autofix for CodeQLアラートが一般提供を開始している。 加えて今回、Copilot Autofixを使ったGHASのセキュリティキャンペーン機能が新発表された。セキュリティスキャンのアラートが大量にたまっているときに、セキュリティチームと開発チームが共同で修正するのを助ける機能だ。 ■ 開発者や学生、10代の支援 次は開発者の支援や教育の分野だ。 □OSSのセキュリティ強化のファンド「Secure OSS Fund」11月開始 開発者の支援では、「Secure OSS Fund」が発表された。オープンソースソフトウェア(OSS)のセキュリティを強化するための資金を、OSSプロジェクトにファンドするものだ。11月に開始する。 既存のものとしては「GitHub Sponsors」もある。ユーザーなどがOSSプロジェクトのメンテナーに対し、金銭的に寄付するしくみだ。これまで6000万ドルがコントリビューターに支払われたという。 同様に、「GitHub Fund」はベンチャーファンドによるOSSプロジェクトへのファンドだ。LLMのプロジェクトなどがファンドを受けているという。 □GitHub Copilotの教育向け等無料枠を100万人以上が利用、github.comでのGitHub Copilot Chatも 教育の分野では、GitHub Copilotを学生・生徒や教員が無料で利用できる制度がある。同様に主要OSSのメンテナーも無料で利用でき、あわせて100万人以上が無料で利用できているという。 これについて、github.comでのGitHub Copilot Chatも利用できるようになったとアナウンスされた。 □AIが支援するプログラミング学習教材環境「GitHub Next」 また、次世代の開発者に向けたAI時代のモダンなツールとして、GitHubのR&D部門である「GitHub Next」が開発している「Learning Sandbox」もアナウンスされた。 Learning Sandboxは、学ぶ個人にカスタマイズされたプログラミング学習教材環境だ。お題を自分で入力し技術要素ごとのレベルを選んで教材コースを作成し、Web上のコードエディターと実行環境で実習し、生成AIに自然言語で質問もできる。 □10代の開発コミュニティ「Hack Club」が「Hack Club High Seas」をリリース 学生・生徒や教員が無料でGitHubのサービスを使える「GitHub Education」もDaigle氏は紹介した。現在、700万人以上の学生・生徒や、21.4万人以上の教員が利用しているという。 さらに10代の開発コミュニティ「Hack Club」も紹介した。4万人以上が参加し、夏の開発イベント「Arcade」には1万9000人が集まった。 ステージには、Hack Club参加者のAcon Linさんが登場。Hack Clubで開発したサービス「Hack Club High Seas」を紹介した。10代が“何かクールな”プロジェクトを作って投稿することでサービス内の仮想通貨を得るものらしい。 Aconさんは、ステージに上る直前にリリースのためのプルリクエストをマージしたとのことで、リリースされたことをステージ上から確認してみせた。
クラウド Watch,高橋 正和