「DHは褒め言葉ではない」――代理人は鈴木誠也の守備機会を主張も…強打の外野手タッカー獲得でカブス構想に変化
大型トレードが実現した。現地時間12月13日にカブスは、三塁手のイサーク・パレイデス、右腕ヘイデン・ウェスネスキー、そして若手有望株のキャム・スミスをアストロズへ放出。見返りとして強打の外野手カイル・タッカーを獲得した。 【動画】打った瞬間の「ミサイル弾」 鈴木誠也の弾丸ライナーアーチをチェック 今オフの移籍市場のトレード戦線において「目玉」と目されてきたタッカー。その交渉にはヤンキースも参戦していたが、実力派の野手と投手、そして球団のプロスペクトという小さくない対価を支払ったカブスが一気に交渉をまとめ上げた。 現在27歳のタッカーは、24年シーズンは消化不良の1年を送った。6月に負った右すね骨折の影響で出場試合数は「78」にとどまった。それでも打率.289、23本塁打、49打点、11盗塁、OPS.993の好成績をマークし、実力は折り紙付きだ。FAまでは1年だが、シルバースラッガー賞1度、ゴールドグラブ賞1度の実績を考えても、カブスにとってはこれ以上にない補強と言える。 一方でカブスは飽和状態となっている外野手の人員整理が必要な状況ともなっている。かねてから高額年俸のコディ・ベリンジャーと鈴木誠也のトレードの話題は囁かれていたが、タッカー獲得によってどちらかの放出は決定的と見られている。 目下、有力視されているのはベリンジャーのトレードだ。タッカーと同じ左打者である29歳は、残り2年で5250万ドル(約79億8000万円)の契約を締結。また、同契約には25年終了時のオプトアウト権も付帯するため、近年にやや成績を落としていることをふまえても、今が“売り時”ではある。 仮にベリンジャーをトレードで放出したとして、気になるのは鈴木の起用法だ。カブスの地元メディアでしきりに論じられているのは、DHとしての抜擢だ。外野の3ポジションを守備に定評のあるイアン・ハップ、ピート・クロウ=アームストロング、そしてタッカーで埋め、鈴木を打撃に専念させようというプランである。 カブスの地元放送局『Marquee Sports Network』は「タッカーのトレードはカブスの打線の様相を大きく変える」と指摘。「現時点で外野手の顔ぶれは多く、仮にベリンジャーを売りに出した場合、スズキがDHのポジションを利用して多くの打席を確保する可能性が高い」とカブスの構想を読み解いている。 もっとも、カブスと2年契約を残す鈴木側はDHとしての起用に不満を抱く可能性もゼロではない。代理人を務めるジョエル・ウルフ氏は、今月10日の記者会見で「彼ら(カブス)はセイヤをトレードしたいとは思っていないと思うが、『これは断れない』と感じるシナリオもあるかもしれない」と明言。さらに「『フルタイムのDHになれるぞ』と言われたら、彼はその球団と契約しなかった。セイヤは日本で素晴らしい守備の名手だった。だから、DHというのは褒め言葉ではない」と守備機会を求める鈴木の意向を明確にしている。 スター外野手の獲得で一気にテコ入れに動き出しそうなカブス。その展開は鈴木の起用法を含めて注目だ。 [文/構成:ココカラネクスト編集部]