<八戸西・出場への道のり>/下 コロナ禍の逆境逆手に 指導や相談にライン活用 /青森
<センバツ高校野球> センバツの組み合わせ抽選が行われる直前の日曜日。むつ市内のドームで紅白戦を終えると、小川貴史監督(37)は選手らに、自らの課題を無料通信アプリ「LINE(ライン)」で伝えるよう指示した。「振り返りは『メンタル』に入れておくように」 新型コロナウイルスは野球部内のコミュニケーションの形も変えた。ラインをフル活用し現在、チーム内でポジションや選手ごとに分けられた約50のグループで、さまざまな角度から意見を交わす。 ライン活用を積極的に始めたのは新型コロナの影響で部活が自粛となっていた昨年2月からだ。小川監督が、選手たちに自主練習をスマートフォンで撮影して投稿してもらい、打撃フォームの修正などラインを通じた指導を始めたことがきっかけだった。それまでも部内でラインは使っていたが活動日誌を全員で共有する程度にしか使っていなかった。 監督やコーチら指導陣が直接選手らと話せるのは以前は練習時間に限られていたが、ラインの積極活用により「時間の壁」が取り払われた。ミーティングの様子もマネジャーが撮影してラインに投稿し、欠席した人も課題を共有できるようにした。小川監督は、「時間を気にせず、選手たちと向き合えるようになった」と語る。 部活の自粛中にチームのコミュニケーションの核となっていったのが、監督やコーチら指導陣がそれぞれの選手と個別につくる小さなラインのグループ「メンタル」だ。そこには、選手たちから技術面の課題からプライベートな悩みまで幅広い相談が寄せられる。 「メンタル」では、試合でメンバーに選ばれなかった選手から「なぜ試合に出られないのか」と率直な思いがぶつけられることもあるという。そういう時には監督らが丁寧に説明し、次につながるようアドバイスを送る。 メンバーからは、「以前は監督やコーチとの間に壁を感じていたが、今は安心して話ができる」という声も。また、西谷泰成選手(3年)は「スイングを動画で確認してもらえるようになり、迷いなく振り込めるようになった」と話す。 小川監督は「コミュニケーションが濃密になり練習の質が上がった」と語る。コロナ禍の逆境を逆手にとり、チームの結束を強くした八戸西。待望の春の舞台はもうすぐだ。【南迫弘理】