【WMSから読み解くEC物流の動向】コマースロボティクス 中嶋直人事業部長「次なる進化はマテハン連携」
WMS市場はまだ8年
――WMS市場はどのように変化してきたか? 当時、WMSという概念が浸透しておらず、販売してみると全く売れない状態が続いていた。 当時、運賃などの送料が安い時代。強いタリフ(運賃表)があれば他は不要という時期だった。システムを入れるという概念もほとんどなかった。 物流にWMSなどシステム的な概念が浸透してきたのはここ8年ぐらいの話。この間に物流が大きく変わったと捉えることもできる。 振り返ると「エアロジ」の販売は本当に苦労した。現社長の伊藤と私の二人で毎日、営業を続けていた。今は延べ1500アカウントを開設できているが、当時の目標は100アカウントで、実際の契約は30アカウント程度だった。 転機を迎えたのは18年。ECの外部環境が変化した時期でもあった。新たに定期通販のWMS「コマロボリピート」の展開が始まった。 当時、「定期通販」の市場は全盛期だった。市場があるのに、市場自体を知る物流企業も少なく、アパレルや雑貨などの業務をこなす企業が大半だった。また、定期通販に対応したWMSもほとんどなく、定期カートの代理店を行っていたベンダーが勢いをつけていた。 その後、定期通販の良さを知った物流企業が定期通販の受注を行うようになった。物流企業が化粧品や健康食品の業務を受注したほうが良いとなったのは、このあたりからだろう。 ――定期通販の次はコロナが契機か? 2020年に発生した新型コロナウイルスの感染拡大を契機にEC市場自体が改めて大きく変わった。2017年に大手配送会社の運賃値上げも市場が変わったタイミングの1つ。これは、荷主と物流の双方で影響を受けた出来事だった。 一方、コロナを契機に市場が変わる前、当社の体制やWMS市場も少しずつ変化していった。なかでも、WMS最大手のロジザードが株式上場したのは当社にも良い刺激となり、WMSが一斉に広がるタイミングでもあった。 前述したとおり、当社のWMSは良い意味で初期設計がしっかりしていた。柔軟性もあったことから、荷主や倉庫主の状況が変わってもしっかりと対応できた。WMS市場の拡大と並行して当社もその波に乗り、着実にアカウント数を増やすことができた。 さきほど、述べた定期通販だが、法規制が始まってから、一気に市場がシュリンクしてしまった印象だ。これは、倉庫側にも大きな影響を与えた。おそらく、現在の定期通販市場は健全な企業だけが残っている状況だろう。法規制というメスが入ったことで市場自体も変化してしまっている。 コロナによる市場変化の良かった面は、ECに参入する企業が増えたこと。これは当社にとっても追い風で、日本のEC化率も上昇した。コロナがデジタルシフトを一気に加速させた。 当社のサービスでも、OMSなどが飛躍した。EC市場は、Shopify(ショッピファイ)などの新たなカートが台頭し、カート側と連携する支援企業も増えていった。 <今後、3PLの倒産も> ――御社のWMSデータから見えるEC動向が気になる。 顕著なのは食品系の伸びで、特に冷凍食品が伸びている。韓国コスメもセール時期などは一気に物量が増えている。一方、アパレル商材が減った印象だ。 これは推測もあるが、アパレル界隈は、これまでインフルエンサーなどによる拡散力が販促の鍵だったが、今はその勢いが通用しなくなっている。 アパレルは在庫管理を含む物流管理の難しさもある。中小のEC事業者は自社サイトで販促を強化するよりも、ECモールなどを活用した方が良いという流れが顕著で、物流もできる強みもある。 物流業界は2024年問題もあり、変化が激しい。M&Aも増えている。同時並行で、荷主に左右される物流だけあって、コロナ後の勢いが鈍化している今、3PLの倒産も多くなり、これから増える可能性もある。 <マテハン連携のWMS> ――変化が激しいEC市場と様変わりしている物流業界。間にいる御社の今後の施策は? 会社としてはAI活用をどうしていくかという点がある。 物流でみると、ロボや自動設備のマテハンの動きを注視している。 物流における自動設備やロボティクスがトレンドだが、動向がはっきりしてきた。こうした中、当社としては各社のマテハン機器をつなげるシステムの開発を進めている。 ロボティクスなどの導入よる効果が見えてきたこともある。ただ、自動設備やロボ類は、まだ点でしか見ることができない。これを線にできるようなシステム開発を進めている。これらを新しいWMSとしてローンチさせる。 また、当社は全国160拠点の倉庫と連携しているため、荷主に要望に応じて倉庫を紹介することもできる。 冷凍食品の市場はこれからも伸びるだろし、冷凍・冷蔵に関する相談が多いため、荷主のニーズに応じた対応も引き続き、強化していくつもりだ。
日本ネット経済新聞