天王寺動物園ホッキョクグマ親子旅立ちへ 飼育員の熱き思い
バフィン・モモは11日午後1時半で展示を終了
バフィンが来園した時から担当していた飼育員の下村幸治さん THE PAGE大阪 編集:柳曽文隆
大阪市天王寺区の天王寺動物園の人気者、ホッキョクグマの「バフィン」「モモ」の母娘が11日午後1時半で展示を終了。13日に静岡県の浜松市動物園へ引っ越しをする。バフィンは浜松から借り受けていたため、モモと一緒に帰るということになるが、この母娘は昨年の「天王寺動物園100周年」を盛り上げた存在であることから、来園者の間では「寂しい」という声も多数聞かれる。そこで、今回はそんな人気者をずっと飼育してきた下村幸治さん(38)を訪ね、この2頭との思い出を語ってもらった。
国内でも珍しい13歳差のペアリングだった
同園によると、バフィンがやってきたのは2011年3月。ちょうどその年に進められていた「ホッキョクグマ繁殖プロジェクト2011」の一環として、浜松から天王寺へやってきたという。 ちょうどその時、天王寺にはオスのゴーゴ(現在は和歌山県のアドベンチャーワールドに貸し出し中)がおり、さっそくペアリングが進められた。しかし、そう簡単にはうまくいかなかった。 「当時のバフィンは19歳、人間で言えば『熟女』でした。ゴーゴは当時6歳で、これだけの『年の差カップル』でのペアリングは、全国的にも珍しいといわれていました」と下村さんは振り返る。 しかし、天王寺は過去に繁殖実績もあり万全の態勢で臨んだ結果、交尾に至った。同時にそれが話題となり報道されるなど注目をあびたが、1年目は出産には至らなかった。「あれは空振りでガッカリもしました」と下村さんは振り返るが「けど、それがすごく良い準備となって、後々につながったと思います」と続けた。
モモの成長「順調すぎて怖かったくらいです」
そして2014年11月に赤ちゃんが誕生。その時の喜びようは計り知れなかったという。「これが失敗していたら、もうバフィンはその時点でここにいなかったでしょうから」と下村さん。バフィンは過去に3度子育てを放棄しており、戦前に建てられたというレトロな舎で、下村さんら担当飼育員が懸命な「技術介入」を行う形で、しっかりと子育てをサポートし続けた。 2015年3月に一般公開された際は、ふだん水をはっているプールには大量の草を敷くなど、赤ちゃんがケガをしないよう、慎重な配慮を重ねた。「過去に繁殖できた場所ではありますが、やはり戦前のつくりなので、そういう点は赤ちゃんにとっては危険な部分もありました。けど、このデコボコのおかでで、赤ちゃんは足腰がしっかり鍛えられて、現在に至っています。順調すぎて怖かったくらいです」 やがて、この赤ちゃんは「モモ」と名づけられ、あっという間に同園での人気を不動のものに。また、ちょうど同園の100周年という最大の節目の年に登場したとあって、愛嬌のあるしぐさなどが老若男女を問わず、幅広い人気を得た。