パラレルシンガー・七海うらら 「生き様を歌詞に込めて」 がん闘病乗り越え作る、寄り添うための楽曲
リアルとバーチャルを行き来する“パラレルシンガー”の七海うららが、このたび、ラジオ番組に出演。自身の経験を踏まえたデビューのきっかけや、音楽を通して叶えたい夢などについて語った。 パラレルシンガー・七海うららのファーストアルバム『Kiss and Cry』 さまざまな音域の声を使い分け、ギャップで魅了する七海うらら。2020年より、YouTubeやTikTokなどで動画投稿を開始。2022年夏に投稿したショート動画がきっかけで一躍話題となり、2023年5月にメジャーデビューを果たした。ボーカルとしてだけでなく、イラストやデザイン、動画などのクリエイターとしてもマルチに活動している。 ※聞き手=ラジオ関西『Clip』月曜日パーソナリティーの近藤夏子(シンガーソングライター)とタケモトコウジ(ラジオDJ) ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 【近藤夏子(以下:近藤)】 “パラレルシンガー”ということで、いただいた名刺のアーティスト写真はイラストですが、実際ここに来てくださっている七海うららさんは人間です。たぶん。時代が進化してAIの可能性もあるけど(笑)。 【七海うらら(以下:七海)】 あははは! 【近藤】 笑い方に人間味があるから、本物の人間です。 【七海】 はい、関西出身です。 【タケモトコウジ(以下:タケモト)】 関西出身! 関西弁ですね。 【七海】 バリバリです! 【近藤】 でも、アーティスト写真はイラスト? 【七海】 そうですね。リアルとバーチャル、というふうに言わせていただいたんですけれど。 【近藤】 お顔を出してはいないってこと? 【七海】 じつは、今回発売のアルバムで初解禁ということで、チラッと見えてるんです。 【近藤】 どういうこと? 【タケモト】 (アルバムのジャケットを見ると)寝ているイラストがあって、下が氷なんですね。 【七海】 氷の反射で映っている顔が、リアルな私です。 【近藤】 いや、これ見えてる。見えすぎちゃいます? 【タケモト】「見えすぎ」って言ったら、どんな格好してるのかと思っちゃうよ。 【近藤】 あ、そっか。もうちょっと隠したほうが……。 【七海】 ライブ会場とかだと、逆光で顔だけうまく暗くなっているようなスタイルで、横にバーチャルの自分がいるというデュエットスタイルとかもやるので、普通のライブとはまた違う新しいスタイルかなと思うんですよ。 【近藤】 立ち位置ミスったらヤバいですよね。ライティングがあるから、ちょっと立ち位置がずれると「あれ? 顔見えてる見えてる」って(笑)。 【タケモト】 1度ライブを見させていただいたことがあるのですが、そんなに立ち位置を気にしながら歌ってたんですか? 【七海】 打ち合わせのもとでやっているので、事故はなかったです(笑)。 【近藤】 すべてちゃんと打ち合わせのもと決まっている。これはリアルです! 【タケモト】 普通のライブよりも、だいぶカッチリってことですね。 【七海】 結構難しいですね。 【近藤】 すごいわ。私みたいにセットリストを急に変えたり、リアルが過ぎるとダメですね。 【七海】 臨機応変にされててすごいです! 本当に。 【近藤】 このスタイルでデビューしよう、というのは自分の意思なんですか? 【七海】 2022年までは普通に会社員をしていたんですけど、もともと乳がんになっていて、そのころは会社に行きながら闘病もしてという状態だったんです。 【近藤】 年齢は公表されてないですけど、若いでしょ? 【七海】 新卒ぐらいのころに乳がんになって、闘病しているときに「治ったらやりたいことで生きていきたい」と思って、会社を辞めようかと考えたんです。 でも、いきなり音楽で食べていけるわけがないという思いがあったのと、会社に行っているのでいきなりネットに顔を出して歌をあげるというのにも少し抵抗があったので、首の下からの画角で撮影した弾き語りのショート動画をTikTokとかで投稿したんです。 そこから、いろんな表現方法があったほうが「ライブに出たい」「メディアに出ていきたい」となったときに活動の幅が広がるなと思って、バーチャルに目をつけたという感じなんです。 【近藤】 時代的にもバーチャルに活躍されてる人も多いですしね。 【七海】 歌手のあり方のスタイルとして、リアルもバーチャルも取ったという感じですね。 【近藤】 闘病生活のことを話されたり、自分の生活をさらけ出していますよね。バーチャルというと、どうしても現実味がないという感じがしますけど。 【七海】 仮想空間みたいなイメージもありますよね。メタバースとか。 【近藤】 (私生活がわからない)ミステリアスな感じの人が多いなかだと、だいぶさらけ出してるんじゃないですか? 【七海】 私の歌手人生のモットーといいますか、挫折をいっぱいしてきたからこそ、自分の生き様を歌詞に込めることでいろんな人に寄り添える音楽が作れるんじゃないかな、という思いがあるんです。 同じようにがんの闘病をしているリスナーさんがいらっしゃったり、いじめにあったり、いろんなところで挫折や悲しいことがあると思うんです。そのなかで、「この曲を聴いて元気になりました」「うららさんが歌ってるから意味があるよね」と言っていただけることが多いので、自分の人生を歌詞に込めるためにもさらけ出しているという感じですね。 【近藤】 なにか楽器をやっていたり、もともと音楽が好きだったんですか? 【七海】 軽音楽部でギター・ボーカルをやっていたことはあります。そのころは本当に趣味で、夢を志すとかもなく、学校で部活としてやっていたぐらいなんです。 【近藤】 就職時にも音楽を考えるとかはなく進んでいたけど、人生の転機が来たときに自分の人生について考えて、「やっぱり音楽をやろう」と思った? 【七海】 そうです。数年はネットにコツコツ動画を上げ続けるという生活だったんですけど、おすすめに載ったり、少しずつ人に届いていったりというのをきっかけにavexのスタッフさんからスカウトしていただいてメジャーデビューしたという流れですね。 【近藤】「人生なにが起こるか分からない」のひと言で簡単にはまとめられへんねんけど、でも本当にその感じで(人生なにが起こるか分からないから)やりたいことを思う存分やってみよう、ということなんですね。 【タケモト】 11月20日には、ファーストアルバム『Kiss and Cry』をリリースされました。先ほどの話にもありましたが、ちょっとだけお顔が見えているジャケットのアルバムでございます。 【七海】「Kiss and Cry」はフィギュアスケート用語なんですけれども、(アルバムジャケットでは)スケートリンクに寝そべっていてメダルもあってと、“フィギュアスケート”がコンセプトになっています。 じつは、もともと音楽をはじめる前にフィギュアスケートの選手をやっていたんです。姉妹で浅田真央ちゃんに憧れて。 【タケモト】 そこから、“フィギュアスケート”を今回のコンセプトに? 【七海】 そうですね。「Kiss and Cry」という言葉は、選手が滑り終わったあとにコーチと点数を待つ場所を指すんですよ。あのドキドキの。 【近藤】 あの、ティッシュをめっちゃ使う場所? 【七海】 そうです、そうです! 【近藤】 寒かったやろうなあっていう、あの場所ですね。 【七海】 悔し涙を流したり喜びのハグをしたりする場所なので、「Kiss and Cry」という名前なんです。 【近藤】 へえ~、おしゃれ! 私やったら「ティッシュスペース」とかいう名前をつけちゃいそうやけど。 【タケモト】 それはセンスないわ。 【七海】 私のいまの音楽人生も笑いあり涙ありといいますか、いろんなことがあって。それを曲にぜんぶ詰めますということで、スケート経験も歌詞に込めて自分で作詞させていただいています。(フィギュアスケートは)自分のルーツでもあるし、私は途中で辞めちゃったんですが、妹はいまもプロとして続けているんです。 【タケモト】 そうなんや! 【七海】 音楽の世界から、自分が諦めた世界にもう1度携わりたいなという思いもあって。 【近藤】 基本的にうららさんが作詞しているということですか? 【七海】 今回のアルバムでは作詞に挑戦させていただいていて、作曲してくださるコンポーザーの方と一緒に制作するという形です。今回は特に、曲ごとに声色を変えています。 【タケモト】 ぜんぜん違うよね。 【七海】 巷では、“七色の歌声”と言っていただくこともあるんです。 【近藤】 へえ! 「七海の“七”は七色の“七”」! 【タケモト】 いいやん! それ使おう! 【七海】 曲ごとにキャラクター性がぜんぜん違うしコンセプトも違うし、いろんな色が詰まっています。 【近藤】 すごくおもしろい! ボーカリストというのは、特徴ある声を貫かなきゃいけないとか、聴いた瞬間に誰かが分かるようにとかを意識することもあるけど、うららさんの場合は「この曲に合わせてこう歌おう」というのをそれぞれで変えている? 【七海】 そうですね、曲のなかでも変わったりします。一曲のなかでも“味変”があるみたいな感じです。やっぱり、いまのSNS時代はショート動画も流行っているし、フルで曲を聴いてもらうハードルがすごく高くなっていて、短い曲も多くなっている。「一曲丸々聴いてもらうにはどうしたらいいやろ」という工夫から、“味変””がはじまったという感じです。 【近藤】 そうらしいね。いまの子たちは映画が観られへんっていうから。15秒に慣れすぎて、2時間座ってられへんっていう。 【七海】 ショートに慣れていますね。 【近藤】 時代に合わせて飽きさせへんようにやってるんや。戦略めいたことを考えるのは好きなんですか? 【七海】 めちゃめちゃ好きです! 【近藤】 ぽいよね! 【七海】 そもそも、2022年にメジャーデビューするまでずっと個人で活動していたので、手売りするCDを刷(す)ったり、名刺も自分で入稿したり。企業さんとのやりとりも自分でやっていたので、何でも自己プロデュースしたいタイプですね。 なので、コンセプトやデザイン周りについても自分で絵コンテを描いたり。そういったところにも携わって、しっかり自分で監修していくということはやっています。 【近藤】 そうすると、「ぜんぶ自分で責任を負わなあかん」というプレッシャーがかかるじゃないですか。 【七海】 ただ、自分の信念を貫いているからこそ人に届けられるものにはなっているかな、とも思うので結果オーライな感じはしますね。 【近藤】「やりたい」という気持ちの強さが現れているし、やりたいことの数とかワクワクが多いんでしょうね! 【七海】 人生は有限だと思っているので、「できる間にできるだけ動こう」みたいな気持ちがあります。 【近藤】 それがすごく伝わってくる。やっぱり、1度自分の命と向き合ったというのが大きいんですか? 【七海】 そうですね。1度どん底を味わっているので、「あとはもう上がるしかないやろ」という感じです。いまは夢がいっぱいあって、それこそ、フィギュアスケートに音楽から関わりたいという思いもありますし……。 【近藤】 それ、叶うと思う! 【七海】 本当に叶えたいです。いまは、アイスショーなどアーティストとコラボするショーもあって、実際に歌う方と滑られる方のコラボとかもあったりするので。 【近藤】 もうこれ、決まってるんじゃない? 【七海】 いやあ、まだこの話はないですね。 【近藤】 来年の2月くらいにはもうやってそう。そのくらいのスピードで叶っていってもおかしくないくらいの熱量だもん。 【七海】 言うだけならタダなんで(笑)。これ(ラジオ)を聴いてくださっている方のなかにスケート関係者の方がいたら……。 【近藤】 アピールも上手いし、やりたいという感情が強いぶん、ちゃんと言葉にして言霊にしているから、ほんまにかなり(実現する)スピードが早いと思う! 【タケモト】 言語化能力が高いというのはすごく大事。さすがでございます。 【七海】 1人でラジオパーソナリティーをやったり、自分のYouTubeチャンネルで配信をしたり、ファンの方とも都度コミュニケーションを取るようにしていますね。 【タケモト】 これはできる人やぞ。 【近藤】 ぜんぶ自分でやってくれるから、マネージャーからしたら楽だろうね。 【七海】 正直それは言われますね。「言おうと思ったら先にやってた」みたいな。宣伝とかは自分で率先してやるので、SNSはすごく得意ですね。 【タケモト】 すごいわ。 【近藤】 大っ嫌いやもん、私。やりたくなくて、(マネージャーに)「やってください」って言われて「分かった、分かった」って言って、5回ぐらい言われてようやくやってる。 【七海】 あははは! 【近藤】 いやあ、すごいわ。七海うららさんというアーティストに出会えてよかった。いまの時代って、人間性にひかれてアーティストを追いかける人が多いから、幅広いファンからどんどん応援されるようになっているのがよく分かります。楽しかった!
ラジオ関西