睡眠不足ニッポン 睡眠ビジネス 拡大の動き【WBS】
日本は世界トップレベルで睡眠不足が深刻だといわれています。睡眠不足は企業にとっても大きな問題で、睡眠の質を向上させることは仕事のパフォーマンスを上げる効果もあるといいます。こうした中で、睡眠に関するビジネスに企業が参入し、新規拡大を狙う動きを取材しました。
オフィスの一角に仮眠室
不動産サービスを提供する「CBRE」のオフィス。そこで仕事をしている社員の舘沙友美さんが、仕事を中断しどこかへ歩いていきます。舘さんが向かった部屋は、オフィスの一角に設置された仮眠室「ちょっと寝ルーム」です。傾斜をつけたベッドと音楽や照明で仮眠ができる部屋になっています。舘さんは15分間、このちょっと寝ルームで仮眠し、再び仕事を再開しました。 「きょうはすごく眠くて。午後になってから『とろん』としていた。15分だけでも寝て、戻ってきたらすごくすっきりした。仮眠を挟むか挟まないかで午後の生産性や仕事、仕事を終えてからの自宅での家事や子供のことだったりが少し変わる」(舘さん) 仮眠室を設置した狙いについてCBREの遠矢敏靖さんは「ストレスを取り除いて、精神的にも身体的にも健康になっていることによって、利用者の満足度が上がっているので、会社の生産性の貢献にはつながっている」と話します。
CBREは今年オフィスを改修したのに合わせて、ちょっと寝ルームを導入しました。この仮眠室を開発したのは寝具メーカーの「西川」です。その西川のオフィスを訪ねてみると、何人もの社員が睡眠をとっていました。 一体なぜなのか。西川の菅野達志社長に話を聞いてみると「理想的な環境でちょっと15分程度仮眠をしたらどうなるかという実験をやっている。『ちょっと寝』ができれば午後のパフォーマンスが良くなるというエビデンス(根拠)が取れている」といいます。 西川では、社員から睡眠のデータを収集し、ちょっと寝ルームを企業に提案する際のデータなどに活用しています。さらに西川では睡眠について自前の研究所「日本睡眠科学研究所」を設置し、専門家や他企業とも連携しながら様々な睡眠のデータを集めています。 「元々は寝具メーカーだが、何十年にもわたって睡眠を研究してきた。『スリープテックカンパニー』と標ぼうしている。そういう会社に進化をさせていきたい」(菅野社長) 寝ている時の姿勢や体温などのデータはトップアスリートが愛用する「AiR」シリーズのマットレスや枕などの開発に活用。背景にあるのは、日本人の睡眠不足や健康意識の向上によって、この分野の市場の急拡大が予想されていることです。 国際的な調査では日本の睡眠時間は最下位で、平均と比べ1時間余り少ない結果となっています。菅野社長はこうした状況も踏まえて、睡眠に関する新たなサービスを近く発表すると明かしました。 「マットレスにセンサーを装着して、睡眠中のバイタル(心拍数や呼吸数など)や睡眠の状態をモニターできる『IoTマットレス』の開発が終わった。睡眠状態を見える化して、体調管理に生かせるような、さらに体調に応じて提案してくれるようなサービスの開発を今進めているところだ」(菅野社長)