選手から企画提案!?スタグルの売上が1.5倍!?――MBS番組プロデューサー&クラブ広報が語る『ガンバTV』リニューアルの裏側
次のスターをMBSさんと一緒に育てたい
――新MC就任と並んで、放送頻度が月1回から週1回に拡大……正確には以前の放送頻度に戻したことも大きなリニューアルポイントです。 蔵本「コロナ禍の様々な規制がある中では、十分な収録機会が確保できないことから月1回の放送という形を近年はMBSさんにお願いしていたのですが、コロナも明けて、スタジアムの入場制限も撤廃されて、クラブとしても積極的に情報を発信できる環境が整ったことで、今シーズンから週1回放送に戻していただいたという経緯です」 ――週1回放送になったり、TVer(ティーバー)で関西圏以外の方も視聴できるようになったり、番組の露出が増えたことの影響を感じることはありますか? 蔵本「ガンバは関西以外の地域に在住されているサポーターが多いクラブなので、TVerの影響は大きいと思います。それはSNSを見ていても関西以外に住んでいるサポーターの方が番組の感想を投稿されている様子を見ても分かりますね」 榑松「TV番組の影響力を測るデータとしては視聴率が一般的だと思いますが、我々がチェックしているデータの1つに視聴占拠率(※視聴全体を100として、各局が占める割合)というものがあります。例えば、この視聴占拠率はたむけんさんMC時代である2020年上期で平均7.5くらいだったのですが、今シーズンは9.3くらいまで伸びていて、現時点ではリニューアル効果があったのかなと好意的に捉えています」 ――増加した1.8の視聴者が新規ファンだったらいいですね。実際、スタジアムへの来場者データにおいて新規ファンが増えているデータはあるのでしょうか? 蔵本「この取材前に社内の各部署に聞いてみたのですが、明確に新規ファンが増えたというデータはありませんでした。ただ、先日ガンバTVでスタジアムグルメを紹介する企画を放送したのですが、番組内で紹介した商品の売上が約1.5倍になったという効果はあったようです」 ――『スタジアムグルメPR対決』ですね。この企画もそうですが、リニューアル後は選手がリラックスして話している姿が増えた印象があります。 榑松「倉田(秋)選手、黒川(圭介)選手、山田(康太)選手が『ドーナツ・ピーナツポーズをやりますよ』と提案してくれた回を覚えていますか? あれが良い例ですよね。番組側からではなく、選手から企画を提案してくれるのは、良い意味でMC3名の敷居の低さというか、年齢の近さもあってのことだと思います」 蔵本「ガンバTVの収録を見ていると、宇佐美(貴史)選手や三浦(弦太)選手などキャリアのある選手はやっぱり話すが上手いなぁと思うのですが、クラブとしても次のスターをMBSさんと一緒に育てたいという考えはあるので、MCの皆さんにも魅力を引き出してもらえると助かります(笑)」 ――名前の挙がった宇佐美選手や三浦選手、福岡将太選手のトーク力の高さはサポーター間でも有名ですが、クラブの広報として今後ガンバTVを通じて魅力を訴求したい選手は他にいますか? 蔵本「えぇぇぇ……選手も記事を読んでいるので言いにくいですね(笑)。ただ、鈴木徳真選手はTVでも、普段の取材でもしっかりと自分の言葉で発言ができる選手だなと思います。あとはアカデミー出身選手にも頑張って欲しいです」 榑松「そうですね。先日『教えて!大阪ダービー』という企画を収録したのですが、そこでも鈴木徳真選手は話が上手いなと思いました。お笑いをよく知ってらっしゃる方というような(笑)。アカデミー出身選手ということでいえば、唐山(翔自)選手は真面目で明るいキャラクターはすごく魅力的だなと思ったので、ピッチ内でもぜひ活躍してもらって露出を増やして欲しいです」 ――ガンバTVの露出効果もあって、5月6日(祝)に開催される大阪ダービーはチケットが完売しました。当日は試合前にガンバTVのMC陣が登場するトークショーも開催されます。 榑松「地上波放送への期待として新規ファンの獲得があることは理解していますので、大阪ダービーなど大きなイベントに関しては今後も告知のご協力をさせていただければと思っています。その上で番組としての面白さを意識しつつ、バランスと言いますか、ガンバさんとMBSお互いにとってウィンウィンになるような企画を今後も検討したいですね」 ――本日はありがとうございました。最後に今後の番組の展望を教えてください。 榑松「ガンバTVの放送初期に遠藤(保仁)さんが番組のコンセプトとして『お笑い:7 情報:3』という方針を掲げられたんですけど、私はそれが番組制作における心の支えになっていて。私は『せやねん!』や『明石家電視台』などバラエティ番組の分野で働いていた期間もあった人間で、“面白い”はどんなジャンルの番組でもポジティブな影響を与えると信じているんです。お笑い芸人さんやアイドルが一緒に出演しているからこそ、楽しく選手自身の魅力を引き出し、勝っても、たとえ負けても『応援しようや』と思ってもらえるような、魅力あふれるクラブの一助に番組がなればと思っています。ですので、大前提として試合やチーム情報をしっかり取材して視聴者に伝えることはもちろん、“面白いガンバTV”は今後も忘れずに大切にしていきたいです」 蔵本「ガンバTVはファン・サポーターに完全に受け入れられている番組で、内容が面白いから長年続いていると思いますし、先ほどお話したスタジアムグルメの売上への影響なども含めて良い方向にさらに繋がっていけばクラブとしてはありがたいです。小嶋さんもドーナツ・ピーナツさんも今後露出が増えてビッグになられると思うので、我々も負けないようにJリーグの順位を上げて、日本代表の選出を輩出して、MBSさんにとってもガンバに関しての番組を放送することが価値のあるものになればと思っています」 [ライタープロフィール] 玉利剛一(たまり・こういち) 1984年生まれ、大阪府出身。関西学院大学卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリの開発・運用等を担当。その後、筑波大学大学院でスポーツ社会学領域の修士号を取得。2019年よりフットボリスタ編集部所属。ビジネス関連のテーマを中心に取材・執筆を行っている。
玉利剛一(フットボリスタ編集部)