「クリミア問題」何をもって独立なの? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
今後の「落とし所」は?
したがって、その利権が守られると保障されればロシア側から「クリミア編入」を強硬に主張しなさそうです。ただクリミア側が「編入して下さい」と言ってきたら意外と困るかも。反対にウクライナが「この際セバストポリをよこせ」と突っぱねたら両国の紛争になりそう。 国際法に抵触しているかいないかは微妙です。冒頭に書いたような絵を認めるかどうか。おそらく当面アメリカは認めないでしょう。国際司法裁判所に持ち込むのも手ですが、ここでの判断は当事国が付託に賛成しなければなりません。となるとウクライナは明らかな当事国として、クリミア自治共和国とロシアはどういう扱いになるのかという入口論でもめそう。国連安全保障理事会はまったくアテになりません。理事国15のうち14が「認めない」としても常任理事国のロシアが拒否権を行使すれば終わり。反対に「認める」だとアメリカがやはり拒否権を行使するでしょう。
フランスやドイツといった今のところアメリカと共同歩調を取っている欧州諸国の多くもロシアの天然ガスをパイプラインで供給されているので本心はどこまで反対できるか。といって親ロシアに傾くとパイプラインが通る主要なウクライナルートを今度はウクライナ自身が止めかねません。 現実的には歴史的にクリミア半島がほぼロシアへ帰属していたので、アメリカやロシアがことを大げさにして「火遊び」に走るようなことさえなければ、しばらくワーワー言い合いながら終息していきそうです。それにしてもフルシチョフは…… --------------------------------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。【早稲田塾公式サイト】(http://www.wasedajuku.com/)