「クリミア問題」何をもって独立なの? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
ウクライナ南部にあるクリミア自治共和国で16日、ロシア連邦に編入するかどうかを決める住民投票が行われ、暫定結果で編入賛成が95%超と圧倒的多数で承認される見通しとなりました。それに先立って、議会でもウクライナからの独立を圧倒的多数で決めています。ただこれは純粋な独立宣言というよりはロシア編入の是非をめぐる住民投票の下ごしらえだったのでしょう。独立国が自主的に他国への編入を求めたという形ならば国際法違反といった批判をかわせそうだと。当然、ウクライナ側は「違憲だ」と反発しています。アメリカのオバマ大統領も「憲法には領土問題を『ウクライナ全土での国民投票で決める』とある」として同調しました。
「独立国家」の定義は?
本来ならば突然ある国の一個所が、その地域だけの意見で「独立する」といっても認められません。「独立とは何か」という明確な定義はなく、ドイツの政治学者イエネリックが提唱したように、領土と国民がいて統治する仕組み(主権者の明確化など)があれば国家を名乗っていいのですが、現実問題として国際社会が認めなければ機能しないでしょう。 先ほど「本来であれば」と前置きました。というのも「クリミア独立」は所属するウクライナ自体が本来の状態でないからです。同国の親ロシア派のヤヌコビッチ大統領が国民のデモに立ち往生して逃げ出した後、議会が解任決議をし、暫定政権が発足したばかり。憲法を持ち出すならばウクライナ大統領は国民の直接投票で選ばなければならず、議会が弾劾するにせよ十分な手続きが必要です。ゆえにヤヌコビッチ氏は今でも正統な大統領と主張しているし、それはそれで一理あります。暫定政権は親欧米派で、欧州やアメリカは歓迎しています。好きだからクーデター紛いでも認める半面、嫌いだから憲法違反というのも結構適当です。
「クリミア独立」問題の背景
この問題は簡単にみえて複雑な歴史的背景があります。まず「ウクライナ」とは何かです。欧州とロシアの中間に位置して欧州に隣する西部が比較的親欧州で、東部が親ロシアとされています。ただどちらに近づくにせよ独立国家でいたいという強い思いは人口の8割近いウクライナ人共通の願いでしょう。 というのもこの地域は18世紀頃からロシアの支配下に組み込まれ、ロシア帝国が革命で崩壊した1917年を期に一度は独立を宣言しました。しかし革命によって成立した共産勢力に敗北し、共産党の操り人形政権で形ばかりの独立を果たした後、1922年にロシアら他の3か国(原同盟国)とともにソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)結成に至りました。「連邦」とは名ばかりで実際にはロシアへの従属です。 時が流れて1991年8月、ソ連大統領が軟禁され、保守派がクーデターを起こそうとして失敗しました。ウクライナは時を逸せずに独立宣言し、12月のベロベージュ会議で「原同盟国がその意思をなくした」との形で正式にソ連崩壊となりました。以後現在まで独立を継続中。