「うま味調味料」問題も一刀両断!「エリックサウス」稲田俊輔は、なぜ日々食の悩みを解決し続けるのか
「料理の仕事をしていろいろなものを食べて、世の中で美味しいとされるものも、これはこういう理由で美味しいんだなと理屈で分かるようになっていたつもりではありました。 だけどそれが、南インド料理に関しては、全く分からなかったんです。美味しいのかどうかすら分からない、だけどこれは絶対にいいものなんだという確信はあった。 だから絶対に好きになってやる、理解してやると決意したうえで何度か食べるうちに、急に腑に落ちた瞬間があって。しっくりきたときにはもう南インド料理の世界に完全にハマっていました」 ◆担当編集の「悩み」、ぶつけてみた! では、ここでそんな稲田さんに、「FRIDAYデジタル」担当編集の「悩み」を2つ、ぶつけてみた。 まず一つ目。 <いわゆる「うま味調味料」の味を感じてしまうと料理が楽しめなくなることがあります。この感覚はリセットできますか?> 「これはですね、うま味調味料というものがいけないものだというマイナスな感情が、そもそも先入観としてあるからだと思います。 うまみ調味料は単なる調味料のひとつ。塩が入ってるな、砂糖が入ってるなと感じるのと同じでグルタミン酸が入ってるなと感じ取れることがもう素晴らしい。その舌を誇りに思ってください。 先入観を取り払ってみて、そこにあるものだと思えるようになればいいのではないでしょうか」 つづいて二つ目。 <関東風の味付けを、時々甘すぎるように感じてしまいます> 「自分も関西出身なので、ベースには同じような感覚はあります。関東風の味付けを、ひとつのエスニックとしてとらえてみてください。 タイ料理でもインド料理でも、なぜそういう味になっていったかというバックボーンを知っていくうちにそこにロマンを感じるようになります。 江戸から続く料理、たとえばうなぎやそば、そういうものはエスニックとしてとらえたときの完成度はべらぼうに高い。そういう文化やロマン前提で向き合うことで、楽しみ方が見えてきて、きっと仲良くなれると思います」 本書のあとがきで、<おいしい食べ物には必ずロマンがあり、その時おいしいと感じられなかった物にもまたロマンがある。僕はそのことについていつも、ああでもないこうでもないと考え続けている。>と書いている。 「食べることはとても楽しいけれど、残念ながら食べればおなかいっぱいになる。だけど食べることについて考えることは無限にできる。食べるということは楽しいんだよということを繰り返し繰り返し、質問と回答でひたすらそれを伝えている本です」 取材・文:太田サトル ライター・編集・インタビュアー。学生時代よりライター活動を開始、現在はウェブや雑誌などで主にエンタメ系記事やインタビューなどを執筆。
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