宙に浮く大聖堂再建 地震で倒壊、資金不足に NZ
【シドニー時事】ニュージーランド(NZ)南島のクライストチャーチで、2011年の地震で倒壊した大聖堂の再建が宙に浮いている。 〔写真特集〕ノートルダム大聖堂で大火災 深刻な資金不足に陥り、24年8月に再建工事が無期限で中断されたためだ。街のシンボル復興は地元の悲願だが、財政難に苦しむ政府からの支援も望めず、完成のめどは全く立っていない。 石造りの大聖堂は1881年創建。地震で高さ約65メートルの尖塔(せんとう)が崩れ落ち、礼拝堂も損傷した。政府と市、聖堂を所有する教団が拠出した資金や民間からの寄付を基に、2020年に再建工事が始まり、28年の完成を目指していた。 再建費用は当初の見積もりで1億400万NZドル(約92億円)だった。ところが、基礎が創建時の図面より浅かったことが判明。耐震構造を見直す必要が生じ、再計算の結果、費用は2倍強の2億1900万NZドル(約195億円)に膨れ上がった。教団などが支出上積みに努めたが、まだ8500万NZドル(約76億円)足りない状態だ。 地元側は政府に6000万NZドル(約53億円)の追加支援を要請。しかし、減税実施などで政府の懐も厳しく、ウィリス財務相は「私立の宗教施設への支援にしては重過ぎる」と応じなかった。工程の3分の2は残っており、再建事業体のマーク・スチュワート代表は「ぜひ再建したい。関係者と資金調達の協議を続ける」と話す。 大聖堂の近くには13年に仮聖堂が設けられ、礼拝や行事が催されている。日本人建築家の坂茂氏が設計。紙の管を建材に使用し、20年以上の耐久性があるという。