インバウンド新次元 訪日客数が過去最高を更新へ 課題は自然観光への誘導戦略
訪日旅行客はコロナ禍前を超える勢い。だが、都市部集中など課題も浮上している。 ◇米国、韓国、台湾が順調に伸びる 2024年2月からインバウンド(訪日旅行客)が月別で過去最高を超えるペースで増えている(図1)。コロナ禍前のインバウンドの最高は19年だったが、8月の時点で19年より1カ月早く累計2400万人を達成、9月の時点での累計は2688万人で前年の年間2506万人を上回っている。このままのペースが続けば、これまでの過去最高の19年の3188万人を超えるとみられる。 足元の状況について、9月の国・地域別の訪日客を見ると、韓国、台湾、香港、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インド、豪州、米国、カナダ、メキシコ、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、北欧地域、中東地域の18カ国・地域で過去最高となった。円安の恩恵は大きいが、日本政府観光局(JNTO)によると、米国や韓国、台湾など元々ボリュームが多い国がインバウンド本格再開以降順調に伸びており、全体の好調を支えている。中国はコロナ禍前に及ばないものの、個人旅行客を中心に順調に回復している。 また、その他の要因として、東南アジアの国々や豪州では、子供の学校休暇に合わせた家族旅行の需要を的確にとらえていることが大きい。 ◇目的が明確な個人客 消費額も順調に伸びている。観光庁のインバウンド消費動向調査では、24年7~9月期の消費額(1次速報)は19年同期比64.8%増、前年同期比41.1%増の1兆9480億円となっている。国別の内訳は中国が26.6%、次いで台湾が14.6%、韓国が11.7%、米国が9.5%で続く。 昨今の都市部のラグジュアリーホテルの増加やホテル宿泊費の高騰を反映してか、費目別の内訳を見ると、24年7~9月期の宿泊費は33.7%で、19年同期比の29.9%から拡大している。また、コロナ禍前のインバウンドの消費行動は主に中国人客の爆買いが印象的で、買い物代が19年7~9月期は33.2%あったが、24年同期比は28.9%に縮小している(図2)。