「もう一つのパレスチナ」ヨルダン川西岸 住民も近寄らない難民キャンプ 「獄中では拷問」の証言も
■実は友人は戦闘員 死ぬまで知らされず
筆者は9月下旬、西岸の自治区ナブルスのバラタ難民キャンプも訪れた。キャンプの目の前で住民のための文化施設を運営するタイシール・ナスララさん(63)は、「イスラエル軍は連日のように来て住民を連行していく。ガザでの戦闘開始後、数百人は連れ去られた」と話した。
キャンプの内部が見たいと告げると、ナスララさんはムハンマドさん(26)という若者を同行者として紹介してくれた。「イスラエル軍の関係者が女装したり、パレスチナ人に変装したりして浸透している恐れがある。内部は危険だ」と理由を話した。
ムハンマドさんが案内してくれたのもキャンプの外周の一部で、ごく短時間にとどまった。「これ以上内部に行くと民兵が警戒していて危険だ。私も近寄れない場所がある」。ムハンマドさんはこう話し、続けた。「大学生の時に友人がイスラエル軍との戦闘で死亡したのだが、それまで彼が民兵組織の戦闘員だとは知らなかった。知らない方が幸せなこともあるのだ」