地表の大気の外は「いきなり宇宙」じゃない…なんと、120年以上前に「気球で発見」された高層の大気
熱圏は、大気と天文の境界領域
成層圏のさらに上は、次第にオゾンが少なくなっているので、上空へいくほど温度が低くなっています。この層を中間圏といいます。窒素8割、酸素2割という大気の組成は、地上から中間圏までほぼ一定であることがわかっています。 大気最上部の熱圏では、太陽光の高エネルギーの成分が窒素や酸素の分子や原子によって吸収されています。このため、太陽に近い上空ほど気体分子はエネルギーを得て激しく運動し、温度が高くなっています。 熱圏は高度500km付近までありますが、この付近の空気はきわめて希薄です。500km以上は外気圏といい、気体分子の運動速度が地球の重力をふりきる脱出速度を超えているので、空気が宇宙空間へ逃げ出しています。 その一方で、火山活動によりマグマから放出される火山ガスにより、地中から大気に気体が補充されています。 熱圏の下部では、宇宙空間から高速で飛びこんできた塵(小さな砂粒)が、希薄ではあっても存在する空気との摩擦で熱せられて光り、地上から流星(流れ星)として見られます。 また、極地方で見られるオーロラができるのも熱圏の下部です。太陽風(太陽から周囲に吹き出されている粒子)と地球磁場が作用し合うことで地球のまわりに生じた電流が、地球大気に流れこんでオーロラとなります。熱圏では、大気と天文の境界領域の現象が起こっているといえるでしょう。いわゆる「大気圏」は、この熱圏より下層をいいます。
対流圏では上空ほど温度が低くなる
高山に登ると平地よりも空気が冷たいことから、上空ほど空気の温度が低いことがわかります。温度が低くなる割合は、平均的に見て1kmごとに約6.5℃です。 このように温度が低くなっていく割合を気温減率といいます。 空気が地表付近で暖かく上空で冷たくなっているのは、太陽光が空気をほとんど素通りし、初めに地表を熱するためです。熱せられた地表が空気を下のほうから温めます。ここで空気の温まるようすを思い浮かべるとき、地面に接することで温まるイメージをいだきやすいですが、もっと正確な理解のためには赤外線の知識が必要となります。これについては、筆者らが執筆した『図解・気象学入門 改訂版』でくわしく解説していますので、ぜひそちらをご一読ください。 さきほどの図「大気の鉛直方向の温度分布」を見ると、上空ほど温度が低いのは、日本のある中緯度付近の場合、地上から高度11km程度までであることがわかります。この範囲を対流圏といい、対流圏のいちばん上の面を対流圏界面(たいりゅうけんかいめん)といいます。かなとこ雲はこの対流圏界面でできます。 ですから、「かなとこ雲」を観察すれば、対流圏の厚さを直接目で見ていることになります。