地表の大気の外は「いきなり宇宙」じゃない…なんと、120年以上前に「気球で発見」された高層の大気
成層圏の発見
成層圏の発見は、フランスの気象学者レオン・ティスラン・ド・ボールによります。彼は、1896年にパリ郊外の小村に私費を投じて高層象観測所を設け、気象観測気球を用いた高空の温度の観測を始めました。 そして1902年、気温は地上約11kmまでは一様に減少するが、その高度を超えると温度が一定になることに気づいたのです。大気は2層に分かれており、下層を対流圏(troposphere)、上層を成層圏(stratosphere)と名付けました。“troposphere” は変化する(tropo-) 圏(sphere)を意味し、“stratosphere” は層を成なす(strato-)圏(sphere)を意味しています。
成層圏の温度分布
その後、成層圏よりもさらに高層の気温の分布も調べられ、図「大気の鉛直方向の温度分布」に示すように、地表から「対流圏」「成層圏」「中間圏」「熱圏」に区分されています。このような温度の分布は、大気にかかわるいろいろな現象、特に放射と吸収にかかわる現象を反映した結果です。 その後、成層圏よりもさらに高層の気温の分布も調べられ、図「大気の鉛直方向の温度分布」に示すように、地表から「対流圏」「成層圏」「中間圏」「熱圏」に区分されています。このような温度の分布は、大気にかかわるいろいろな現象、特に放射と吸収にかかわる現象を反映した結果です。 対流圏の温度構造では、潜在的に対流が起こりやすくなっています。この理由は、後ほどご説明しましょう。 対流圏の上限である対流圏界面を境に、さらに上空の成層圏では、高度が高いほど温度が高くなっています。 成層圏の温度分布がこのようになる理由は、成層圏の大気に含まれるオゾン(O₃)が、太陽光線に含まれる「紫外線」を吸収して暖まるためです。成層圏は、対流圏とは逆に上から紫外線で暖められるため、上空ほど温度の高い温度分布になるのです。気温が極大となる約50km付近が成層圏の上限とされています。 成層圏では、上空ほど暖かく密度が小さいという、対流圏とは逆の温度構造になっているため、対流圏のような対流活動は抑制されます。このため、成層圏の大気の流れは、ほぼ水平方向のみとなります。対流圏の上層を吹く偏西風ジェット気流は、対流圏内だけでなく成層圏下層にも広がっています。低気圧や高気圧の移動や衰退にかかわる偏西風ジェット気流ですから、成層圏の気象も天気予報には関係しています。 ちなみに、成層圏の気流は乱れも少なく、空気抵抗も小さいことから、長距離のジェット機などはこの層を飛ぶことがあります。