フリーアナウンサー・神田愛花『羽田-那覇 一日2往復ステイタス修行~修行編~』
ノリノリで2往復目
私がこの世で唯一死守したい社会的地位、JALの会員ステイタス。大晦日までに目標のポイント数を貯めるべく、10月某日、羽田と用事もない那覇をファーストクラスで一日2往復する″修行″を決行した。 【画像】個性あふれる神田愛花さんの直筆イラスト(1回~70回)はこちら 1回目の復路。10:15那覇発の羽田便に乗り込むと、客室乗務員(CA)さんから「お帰りなさいませ!」と声をかけられた。不思議に思いお顔を拝見すると、往路でお世話になったCAさんだった。「同じなんですか?」とお聞きすると、「そうなんです、同じメンバーです」とのこと。飛行機のプロたちと同じスケジュールで動いていることに少し興奮した。 那覇2往復の合計フライト時間は、9時間40分。その間ほとんど動かないので、毎回機内食を食べていたら太る。だがこの便は私の好きな洋食。美味しそうすぎて断れず、結局シャンパンと共に堪能。完璧なブランチだった。 食べ終わるとすぐに寝てしまい、あっという間に羽田に着陸。時刻は12:40になっていた。これで半分修行が終了。思っていたより疲労感はなく、(もう1往復も余裕!)と安堵した。 次の便までは2時間10分。空港内にある伊勢丹でショッピングを楽しみ、ノリノリで2往復目の那覇便に乗り込んだ。 すると早速、CAさんが話しかけてきた。「日村様、本日この後の往復ご一緒させていただきます!」と。「よろしくお願いします。実は午前中、すでに1往復したんです」と話した。すると、「もしかして修行ですか? 先日旦那様の修行にもご一緒させていただきました!」と仰った。数週間前、夫も今回の私と同じスケジュールで修行を終えていた。その日に夫が、「CAさんに″修行ですか?″って聞かれた」と言っていたのを思い出し、(この方だ!)と繋がった。「ご夫婦揃って修行にご一緒できて嬉しいです」と仰ってくださったのだが、(本音では″夫婦揃って何やってんだ?″と思われていないかなぁ)と、少し恥ずかしくなった。 またもや眠ってしまい、あっという間に沖縄の上空。日が傾き、朝はエメラルドグリーンに見えていた海の色が、深みのある青色に変わっていた。(那覇便は進行方向左の窓側に座ると、島々の景色が楽しめる)という、新しい発見もあった。 これで3便目の修行が終了。再び那覇空港に降り立った。最後の滞在時間は1時間30分。ブルーシールアイスクリームを購入し、窓に面したベンチに座って食べることに。そこでふと、これまでわざと考えないようにしてきた禁断の疑問に、自ら向き合い始めてしまったのだ。 ◆明確になった″修行の意味″ それは、″本当に意味あるの?″ということ。航空会社の会員ステイタスを上位に保つことが趣味だとはいえ、修行なんてお金がもったいないし、こんなこと一体いつまで続けるのか……。お金は貯金に、時間は休息に回したほうが、よっぽど有意義なのではないか……。 この疑問に向き合ったら最後、修行なんてくだらなくてできなくなると思っていたので、(来年からはやめる?)と自分に問うた。窓の外には、夕陽を受けながら飛び立つ時を待つ飛行機がいた。その姿を見ていたら……(「やめる!」なんて言えるものか!!)。だって飛行機を見ていると、心底ワクワクするのだ。(私は地球を楽しめている!)と。 遡ること12年前。車の運転免許は持っていたが、それだけでは陸しか自在に移動できず、もったいないと感じていた。せっかく地球に生まれたのだから、すべてをちゃんと楽しみたい。(そのためには海と空も自由に動けなきゃ!)。そんな思いから、世界中の海を航行できる一級小型船舶操縦免許を取った。残すは空。ただ空関係の免許は難しい。諦めたのだ。 だが航空会社のステイタスにこだわるようになって以降、空も楽しめている実感がある。諦めた飛行機の操縦免許の穴埋めをしてくれているのだ。ってことは……そう、(私は地球を楽しむために修行をしている!)。航空会社のステイタスにこだわる理由が自分の中で明確になり、誇らしい気持ちになった。 19:00発、羽田行き。「お帰りなさいませ!」のお言葉を頂戴し、着席。最後の晩餐はミラノ風ポークカツレツだった。一人シャンパンで乾杯。カツレツを頬張りながら、年内にもう一日控えている修行に向けて、気合が入ったのだった。 かんだ・あいか/1980年、神奈川県出身。学習院大学理学部数学科を卒業後、2003年、NHKにアナウンサーとして入局。2012年にNHKを退職し、フリーアナウンサーに。以降、バラエティ番組を中心に活躍し、現在、昼の帯番組『ぽかぽか』(フジテレビ系)にメインMCとしてレギュラー出演中 『FRIDAY』2024年12月13・20日合併号より イラスト・文:神田愛花
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