「行政の仕事」は今後<AI>がさばく?AI研究者が予測する<公務員の10年後>。「効率化が進んで少人数化。その分幹部は…」
◆意思のないAIにできない作業 半面、政治的な意味での意思決定に、公務員の仕事が深く関わっていることもあります。 賃貸物件を決めるのと同様、限りある財源とさまざまな政策パッケージがある場合、結局、有権者や市民はそれぞれに利害が異なるため、AIに向くような合理的な作業ではものごとが決まりません。 新しい公園をどこに作るか、補助金の対象を何とするか、子どもの医療費を補助すべきか、それとも高齢者福祉に使うのか……こうした選択は政治や行政の場でつねにつきまといますが、結局最後は話し合いなどのプロセスで意思決定するしかありません。 こうした「町と人の生活を作る」作業は、意思のないAIには無理なのです。 したがって、公務員や役所では、作業は今後も比較的スピーディーにAIなどによって効率化され、私たちもその恩恵をわかりやすく実感するタイミングが来るでしょう。
◆公務員に残される仕事 一方で、公務員に残されるのは、高度な意思決定に関係する重要な仕事となります。 もしかすると、公務員個人の本音としては、あちらを立てればこちらが立たないような話をうまくAIがまとめてくれたら角が立たずに助かるのかもしれませんが、その期待はしないほうがよさそうです。 従って、今後も幹部の公務員には、重いプレッシャーがかかり続けると予想されます。 AIの「侵食」を受けないのはうらやましいと思うかもしれませんが、それはそれで大変な役割が、かえってクローズアップされることにもなります。 ※本稿は、『10年後のハローワーク これからなくなる仕事、伸びる仕事、なくなっても残る人』(アスコム)の一部を再編集したものです。
川村秀憲