「行政の仕事」は今後<AI>がさばく?AI研究者が予測する<公務員の10年後>。「効率化が進んで少人数化。その分幹部は…」
2024年5月にアメリカのオープンAIが、人間とほぼ同じ速さで音声対話ができる対話型AIの新モデル「GPT-4o」を発表し話題になっています。そのようななか、人工知能研究者の川村秀憲教授は「<AI失業>が日本でも増える可能性がある」と危惧しています。そこで今回は、各業種のAI化が今後どれだけ進むのかという見通しをまとめた川村教授の自著『10年後のハローワーク これからなくなる仕事、伸びる仕事、なくなっても残る人』から「公務員、公共団体」業界のAI化について解説します。 【イラスト】もしも、市役所の戸籍課でAIが活躍していたら? * * * * * * * ◆公務員、公共団体 ーーAI化率60% 業務のますますの効率化が進んで少人数化していくが、幹部の公務員への負担は増大するーー 公務員、あるいは国や地方公共団体の官公署(役所)については、民間企業ではないだけに経済論理だけですべてが動くわけではなく、また、政治的な意味合いにおける意思決定の部分はAIでは代替しにくい、あるいはするべきではない分野が存在します。 一方で、行政の効率化はつねに課題とされていることもあり、別の一面では案外すんなりとAIによる代替が進む部分もあると思われます。 つまり、ひとくくりで考えるのは難しいわけです。 たとえば、コロナ禍でも話題になったように、残念ながら日本の行政手続きはデジタル化において他国に遅れを取っていたのは明らかでした。 また、いちいちアナログ的な手続き(窓口に並び対面で手続きする、申請や書類を紙で提出する……など)をしなければならない非合理的な部分が残されてもいます。 手続きや申請の処理は、意思決定ではなく作業です。 行政やそこで働く公務員は、原則として法令で決まっていることを、決まっているとおりに処理しなければなりません。
◆AIの活用事例 このプロセスを効率化するためには、AIはかなり役立つでしょう。 たとえば、東京都庁では、2023年から都議会の議事録作成に生成AIの活用を始めました。ChatGPTを開発したオープンAIによるクラウド上の生成基盤を使用しているとのことです。 AIの活用においては、機密、プライバシーの保持面からさまざまな意見が出ていますが、愛知県や名古屋市ではすでにAI活用におけるガイドラインを作成し、神戸市では条例としてAIの使用ルールを定め、2024年から実際に活用していくそうです。 この過程における報告書では、市職員の96%が効率向上を実感し、従来は30分ほどかかっていた作業が数秒で終わる例もあったと言います。 また、NTT西日本とマイクロソフトは、共同で自治体向けのDXやAI活用の導入を支援する協業を始めています。 こうしたかたちでの作業の効率化は、民間同様どんどん進められるべきですし、また成功裏に進めば進むほど、当面の人材は不要になることも考えられます。