離島のスポーツ遠征費が高すぎて、中学生がバナナ収穫手伝い工面も…物価高騰で「できることやりたい」
那覇市から南西に約345キロの沖縄県・多良間島。スポーツ少年団でミニバスケットボールに取り組む児童たちの父母らは草刈りなどで収入を得て、遠征費の足しにしている。
しかし、父母会の高江洲邦彦さん(42)は「宿泊費などの上昇で金銭面で厳しさが増している」と頭を抱える。子どもたちに実戦経験を積ませようと、約60キロ離れた隣の同県・宮古島に練習試合に行きたかったが、断念したことがあったという。
元Jリーガー支援「自分のような経験してほしくない」
そんな中、支援の動きもある。宮古島出身で、サッカーJリーグのコンサドーレ札幌などで活躍した上里一将さん(38)は1月、サッカーイベントを企画。企業から協賛金を募り、運営費を引いた全額を遠征の支援活動をしている団体に寄付した。
上里さんは子どもの頃、遠征費用の工面に苦労する両親を気遣い、痛くない足を痛いと偽って遠征を断ったことが何度もあったという。「今の子どもたちには自分のような経験をしてほしくない」。今後も寄付を続けるつもりだ。
札幌市の南西約180キロに浮かぶ北海道・奥尻島にある北海道奥尻高は18年、「オクシリイノベーション事業部」と銘打って、部活の遠征費を稼ぐ部を発足させた。オリジナルTシャツなどを販売し、その収益で遠征費の一部を賄うのが目的で、現在は6人が所属。近年は20万~30万円の収益を出し、野球部などの遠征に役立てている。
鹿児島県が助成拡充、沖縄県はふるさと納税活用
行政も対策に乗り出している。鹿児島県は今年度、航路運賃をベースに算出している中高生への助成を従来の2割相当から4割相当へ拡大した。
沖縄県教育委員会は今年度からふるさと納税制度を活用して寄付を募る「ガバメントクラウドファンディング」を実施。来年度から離島の高校生を対象に、従来の補助に上乗せする形で支援する計画だ。
一方、スポーツ庁によると、国から離島の子どもたちを対象にした遠征費の補助はない。鹿児島県の担当者は「国に助成制度の創設を求めている」としているが、実現には至っていないという。
関西大の神谷拓教授(スポーツ教育学)は「部活動などで行うスポーツには『教育』としての意義もある。地理的な事情で格差が生じないようにすべきである」と強調。「国や自治体、中学校や高校の体育連盟などが関わりながら全国的に支える仕組みが必要だ。まずは、公的機関が詳細な調査で実態を把握することが求められる」と指摘する。