〈大阪都構想・審判へ〉大阪都は東京都になれるか? 大杉覚 首都大院教授
大阪都構想に対する市民の審判が目前に迫った。論点はさまざまだろうが、なかでも都区制度の根幹をなす都区財政調整制度のあり方は無視できない論点だ。都区財政調整制度とは、本来であれば市町村税である固定資産税、特別土地保有税、法人住民税(調整三税という)を都の税とし、それを財源として都区間の財政調整を図るしくみをいう。例えば、東京でいえば、消防や上下水道などは大都市地域で一体的に行う事業として都が担い、保健所業務などは特別区が担うなど、都区間でどのように事務権限を配分するかも連動する。その意味でも都区財政調整制度は根幹なのである。
大都市東京の財政 「コップのなかの争い」とは?
東京の都区財政調整制度は、改正に改正を重ねて現在の姿に至っている。そして厳密には、現在進行形で改正中というべきかもしれない。現行制度の大枠は2000年地方自治法改正で実現したが、ときに「未完の平成12年改革」と呼ばれるように、詰め切れていない事項がある。本来であれば法施行前に取り決められるべき、都から特別区に交付される交付金と都に留保される財源とを55:45の比率で配分することにようやく決着がついたのは、法施行から7年目のことである。そしてその後も事務配分等をめぐってこれまで都が担ってきた444事務について都区間で点検・協議が重ねられたが、引き続き都の事務とするのか、それとも特別区に移管すべきなのか、いずれに分類すべきか未決着の部分が残されている。事務の分担が変わればそれに伴い財源の配分も変わる可能性がある。例えば、1%の配分の違いは1千7百億円相当になる(平成26年度ベース)。巨大な財源の分捕り合いなだけに、角突き合わせた協議が延々と重ねられるまでに、財調をめぐる都区間の対立構造は根深い。 大都市東京には、大規模なインフラ更新や近々に迫るオリンピック・パラリンピック開催に向けた都市整備をはじめ、膨大な財政需要が存在する。その一方で、少子高齢化が進展するなか、少子化対策や高齢者向けなど対人サービス面で、大都市であるがゆえにより凝縮された形で行政需要が発生する。しかも23特別区間でも大企業の立地する都心区と周辺区の間には財政力に大きな格差がある。東京一極集中、東京富裕論などとのバッシングが吹き荒れようとも、巨大な財源を抜きに大都市経営はこなせないのも事実である。 さらに、実は、平成22年度からの4年間、東京都のうち一般の道府県行政に相当する分だけを取り出してみると財源不足に陥っていた。仮に一般の道府県であるならば、他の道府県と同様に地方交付税制度上の交付団体となる可能性もあったことは意外と知られていない。もちろん、都区制度には都区合算規定という特例があって、道府県分の財源不足分を帳消しにできるだけの大都市分の財源超過があるので、都が交付団体に転落することは事実上ありえない。要するに、都区ともに財政調整制度に依存せざるをえない財政構造なのだ。その上で都区は財源配分や事務配分をめぐる「コップのなかの争い」を延々と繰り広げてきた。