日本の農業は「伝統と未来を両立できるいいポジション」 国連機関のベクドル事務局次長が日本の技術に期待
「アフリカや東南アジアです。東南アジアは日本から近い。農業生産性を飛躍的に伸ばす必要があるアフリカ大陸にも深刻な需要があります。FAOは農家を対象に、現場での訓練と農業技術の普及を目的とした「ファーマーズフィールドスクール」を約30年前から100カ国以上で実施しており、このプログラムにも日本の革新技術や研究成果を取り込んでいきたいと考えています」 ―温暖化など世界的な課題の気候変動への対応では、日本の技術を生かせますか。 「はい。例えば乾燥や高温が厳しいアフリカ大陸の一部地域では、日本の技術を活用して新しい品種の種を作ったり水管理システムを利用してかんがいを行ったりできれば恩恵が大きいでしょう」 ▽国主導ではなく民間企業を巻き込んだ研究開発を ―日本ではこれまで、農業・食品産業技術総合研究機構などが比較的、国主導で農業分野の研究開発を進めてきました。FAOで民間連携の責任者を務める中、どのように感じますか。
「農業と食の分野は、民間か政府主導かを選択するのではなく、両方のバランスを取っていく時代に入っています。基礎研究、応用研究ともに、官民の融合が大事です。持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる2030年の「飢餓人口ゼロ」達成まで残された時間は少ない。官民と科学界が協力しないと、食の生産性を上げながら収益を上げることはできません」 「今回の視察で、日本は既に国の機関が民間と貴重な連携をしている例も知りました。民間は投資という形で財政支援ができる能力を持っていて、彼らの力を生かすべきです」 ―日本に限りませんが、そもそも農業の担い手不足が大きな課題です。どのような解決策があると考えますか。 「農業を若い人にとって魅力的なものにすることが一番大事です。きつい、つまらない、もうからないという古い世代のイメージのままで変わっていません。若い世代は高度な分析ツールも使い慣れていて、デジタルネーティブです。農業は自動化やデジタル活用が進んで変わりつつあると示していくことが必要です」 ―今後、FAOはどういった分野に資金を重点的に振り向けていきますか。