東大卒の33歳、東京都知事選で掲げる「デジタル民主主義」って何?
安野氏が告示日の20日に発表したマニフェストの詳細版は約90ページに及ぶ。タイトルは「テクノロジーで誰も取り残さない東京へ」。研究者、エンジニア、コンサルタント、教員、医療従事者など100人以上の専門家から、チームで分担してヒアリングし、政策をまとめ上げたという。早稲田大マニフェスト研究所が都知事選候補者の公約を比較したページでは、トップの評価を得た。 「チームのコアメンバーは80人ぐらい。日本だけでなく、カリフォルニア、シンガポール、フィリピン、パリ、ロンドンにもいます。世界中に仲間がいるので、24時間態勢で対応できる」と安野氏。これまでの仕事などで培った人脈を生かし、仲間を集めた。 ◇二刀流の選挙戦術、情報を公開 プログラミングを始めたのは9歳の時。家にあったパソコンのソフトを一つ一つ開いては、何ができるか試した。「11歳の時にはパソコン上で動くゲームアプリを作って友だちに遊んでもらいました」(安野氏) 開成高から東京大工学部に進み、AI研究の国内の第一人者である松尾豊教授の研究室で学んだ。学生時代から国会議事録のデータを解析し、議員の質問の特徴を分析するなど「政治の可視化」には関心があった。 「政局ではなく政策を」。今回の都知事選に立候補した一番の理由だ。「東京を良くしたいと思っているのはどの候補者も同じ。お互いを攻撃するのではなく、お互いに学び合うことで主張をブラッシュアップできる」と話す。 26日午後2時からは、候補者の一人でタレントの清水国明氏(73)と柴又帝釈天で選挙カーを並べ、合同演説会を開催。清水氏が訴える「防災」について、安野氏はテクノロジーの視点から災害時における避難者の把握方法などを提案した。 同日夜には新宿駅前で街頭演説。そこに、70代の女性2人組が安野氏の選挙ポスターを受け取りに来ていた。「スマホでいい候補者がいないか検索して、この人なら応援したいと思った」と女性たちは、ポスターを張るボランティアに登録したという。都内に約1万4000カ所ある掲示板。告示から1週間、ボランティア約300人で都心部はほぼ張り終えたという。
安野氏は「ネットだけでは拾えない声もたくさんある。街頭に立つことで知ったこともマニフェストに生かしたい」とも話す。25日には伊豆大島を訪れ、早速アイデアを巡らせた。 「島ではドライバーが不足し、交通の便が悪くて困っていると聞いたのですが、島は道が舗装されていて、インターネットの環境はいい。道路の長さも短いので、自動運転の技術を生かす実験場所にできる」 ネットとリアルの融合。「AIあんの」と「人間あんの」の二刀流の選挙戦術はどこまでアップデートできるのか。「デジタル民主主義」の挑戦で培った情報や技術は選挙後、公開するという。(山本浩資) <サンデー毎日7月14日号(7月2日発売)より>