鉄道会社も限界か? 一向に改善しない「撮り鉄マナー違反」、警告強化が意味するものとは
見直しが求められる撮影マナー
列車撮影を楽しむ「撮り鉄」のマナーが問題とされて久しい。 運行を妨害するような線路内への侵入は論外だが、それ以外にも鉄道会社や沿線地域に迷惑をかける行為が相次いで報じられている。 【画像】「えぇぇぇぇ!」 これが40年前の「流山おおたかの森駅」です! 必要なのは、撮り鉄の「慣習」をアップデートすることだ。 近年、業を煮やした鉄道会社が駅などに掲示した撮影者への警告文を紹介しながら、改めて考える。
無人駅の掲示に見る安全意識の変遷
まず、「写真1」をご覧いただきたい。これはJR北海道の多くの駅に掲示されている注意書きである。 「ホームから線路に身を乗り出す行為」 「自撮り棒、長い棒等を使い撮影・録音する行為」 とある。これらは、撮り鉄に限らず、乗客一般に向けた注意といえる。 近年は観光客、とりわけインバウンド(訪日客)の増加にともない、駅での危険な撮影が目立つようになった。自撮り棒は代表例で、列車への接触や架線の高圧電流による感電などの恐れがあり、とても危険である。 一方、撮り鉄を意識したと見られるのが 「三脚・脚立・フラッシュ・ライト等を使用した撮影行為」 の項目だ。動画サイトへの投稿動画を撮影する人が三脚を駅構内で使用しているケースもあろうが、多くは撮り鉄を対象としているだろう。 いうまでもなく、列車が運行されている駅ホームで、三脚を使うのは危ない。思いがけず倒れた三脚が走行中の列車に当たったり、ホームを歩く乗降客に接触してけがをさせたりする恐れがある。脚立も同様だ。 至極当然な指摘で、撮り鉄はもちろん、全ての利用者が守るべきルールである。しかし、その一方で、こうした行為は長らく大目に見られてきた経緯がある。十数年の経験がある中堅~ベテランの撮り鉄にとっては、 「以前は三脚を使っても問題なかった」 と、安全意識がアップデートされていない可能性があるのだ。
実は半世紀前から「禁止」だった?
例えば、鉄道ファンに高い人気を誇ったブルートレイン(青い客車の寝台特急の総称)の廃止間際の模様を振り返ってみたい。往年の人気ブルートレインが毎年のように廃止されていくにつれ、撮影者も年々ヒートアップしていった。 とはいえ、東京~九州を結んだブルートレイン「あさかぜ」「さくら」が廃止された2005(平成17)年の前後までは、まだ横浜駅など主要停車駅で三脚を構える撮り鉄が存在した。ところが撮影者が増えたからだろう、2008年のブルートレイン「銀河」(東京~大阪間)廃止の頃には、駅では「三脚・脚立禁止」のアナウンスも聞かれるようになった。一方で、東北や北海道方面へ向かうブルートレインが発着した上野駅では、もう少し後、2010年代の前半頃まで、ホーム上での三脚使用が見られた。 もとより、これらは駅側が「やめるよう注意しなかった」だけであって、使用を許可していたわけではない。かなり古い資料になるが、1978(昭和53)年10月号の雑誌「鉄道ファン」に、既に当時の国鉄が「ホームでの三脚使用」は 「厳禁」 としていたことが記されている。公式には、半世紀近くにわたって「三脚禁止」なのである。 このことが明示されるようになったのは、おおむね上記の時期といえる。一部の駅では、より早い時期(2000年代半ば頃)から「三脚禁止」の掲示を出していた例もある。 「以前は三脚を使っても駅員に何もいわれなかった」 といいたい撮り鉄もいるだろう。しかし、禁止されているかどうかでなく、列車の運行に与えるリスクを考えれば、鉄道用地内での三脚使用は避けなければならない。加えて、SNSの普及などを背景に「撮り鉄人口」の裾野が急拡大した近年にあっては、黙認の余地はもはやない。 「写真2」は、熊本・鹿児島両県を結ぶ第三セクター鉄道の肥薩おれんじ鉄道の各駅に張り出されている掲示、「写真3」(次ページ参照)は江ノ島電鉄(江ノ電)の駅の掲示である。いずれも、三脚や一脚、脚立などの使用を禁じている。全国共通の「現代の撮り鉄ルール」と考えていいだろう。これが、現在の撮り鉄に必要なアップデートのひとつである。