【瀧本誠氏の解説】一瞬のスキを突かれた斉藤立 柔道という競技は4年間が一瞬で終わってしまう
「パリ五輪・柔道男子100キロ超級」(2日、シャンドマルス・アリーナ) 初の五輪に臨んだ斉藤立(22)=JESグループ=は2回戦、準々決勝と勝ち進むも、準決勝で金民宗(韓国)の背負い投げに一本負け。3位決定戦でも変則的な柔道のユスポフ(ウズベキスタン)に大外刈りで倒され(技あり)、腕ひしぎ十字固めに参ったして5位に終わった。ロサンゼルス、ソウルで2大会連続金メダルを獲得した父の故斉藤仁さんとの親子メダルはならなかった。シドニー五輪男子柔道81キロ級金メダリストの瀧本誠氏が、斉藤の柔道を解説した。 【写真】息子へ亡き夫への思い 仁さんの遺影を手に斉藤立を見守る母 ◇ ◇ 斉藤選手は2回戦(21年東京五輪金のクルパレク)も準々決勝(22年世界選手権優勝のグランダ)もしっかり組んでやる相手だったので、比較的、自分のペースでできた感じかなと思っていましたが、金選手はタイプが違って、軽量級のように動きながら試合を進める選手だったので、しっかり組めなかった一瞬のスキを突かれたという感じに見えました。本当にその一瞬でした。それ以外は良かったのにと思いましたが。 3位決定戦は、気持ちが切れたのかな。ユスポフ選手は日本人にとって嫌なタイプの選手だとは思いますが、こういうタイプだと分かっていたと思います。それをまともに組みに行ったのは、気持ちが切れていたのかなと思いました。うまく対応できずに、最後は関節を取られたのかな。 柔道という競技は、4年間が一瞬で終わってしまいます。斉藤選手も自分で言っていましたが、力不足なのかなと。あそこで勝っても、今日のリネール選手相手では勝てなかっただろうなと思いました。相手は2回戦から皆、強かったので、それもあるかなと。厳しい組み合わせになったのは間違いありません。 斉藤選手は全日本も国際大会も優勝しているし、経験がないというわけではないと思います。ただ、階級が90キロ級以上になると、日本人にとって厳しいのかなというところはあります。外国人の層が厚いというか。 あとは、全体的に見て、負けた日本人選手は皆そうですが、一本を取る技がないですよね。仮にあっても出せないというか。ピンチの時もこの技があるという、古賀稔彦さんの背負い投げのように、代名詞のような技を持っている選手が少ないと思います。期待させる技があまりなかったように見えました。これからはそういう技を持った選手が必要になってくると思いました。 斉藤選手も、どんな相手でも一本を取れるようなしっかりした技が軸となってやっていけば今後に期待は持てますが、現時点では厳しい。若いと言いつつも、(22歳は)そんなに若くもないと思います。 金メダルのリネール選手は、やはり地元開催という、そのモチベーションではないでしょうか。国民の期待を一身に背負っていましたし、まさかマクロン大統領まで来ているとは。それは気合が入ると思いました。