なぜ福井県から恐竜の化石が出る? リニューアルして話題の県立恐竜博物館で見られる迫力満点の標本たち
日本屈指の恐竜の展示で知られる、福井県立恐竜博物館。そもそも福井からなぜ多くの化石が発見されたのだろうか?その発掘の歴史を紹介しよう。 【画像を見る】『ジュラシック・パーク』を彷彿させるティラノサウルスほか、福井県博物館の、迫力満点の展示たち
『ジュラシック・パーク』を彷彿させる、ティラノサウルスがお目見え
2023年7月、福井県立恐竜博物館がリニューアルオープンした。開館から8カ月で約84万人が訪れるほどの賑わいを見せている。世界三大恐竜博物館のひとつと称され、展示室の全身骨格標本は50体と国内最大級の博物館だ。 建物の設計は国立新美術館の設計でも知られる黒川紀章。エントランスを抜けると、4層にわたる大空間の吹き抜けをエスカレーターで下っていく。まるで恐竜たちが眠る地層へと向かうような演出に期待感が高まる。 エスカレーターを下りダイノストリートを抜けると、1階のドーム状の大空間には恐竜の世界が広がる。その中央には動くティラノサウルスがお目見え。『ジュラシック・パーク』を思い出させるようなリアルな動きに、思わずドキッとさせられる。同じ空間には全身骨格標本が並び、なかには実物の化石でできた標本も10体ある。今回のリニューアルでは、近くでも離れて見ても楽しめるよう、数㎝単位で位置が調整された。 福井県立恐竜博物館はカナダのロイヤル・ティレル古生物学博物館や中国の自貢恐竜博物館と姉妹提携をしており、他にも世界各地の博物館の標本が展示されている。化石だけでなく復元模型も展示され、親子揃って楽しめるが、やはりここで見ておきたいのは福井で発見された恐竜の化石だ。 日本で発見され新種と認められた恐竜は全部で11種。そのうちの6種が福井県で発掘されていることから、福井は恐竜県と言われるようになった。そもそもなぜ福井から多くの恐竜化石が見つかっているのだろうか。 福井での発掘は、1982年に博物館のある勝山市でワニの化石が見つかったことから始まる。85年には北陸に広がる手取層群から大型獣脚類の歯が発見された。父親と一緒に発掘に参加した女の子が見つけ、それを従姉妹が自由研究のために博物館に持ち込み、恐竜の歯であることが判明した。これがきっかけとなり、88年に予備調査が始まった。当時は日本から恐竜の化石が発見された事例は少なく、国際的に日本の恐竜はほとんど知られていない状況だった。以降、4期にわたり現在まで調査が続けられている。 手取層群はジュラ紀後期から白亜紀前期の地層。当時はアジア大陸と地続きで恐竜を頂点とした豊かな生態系があったと言われている。この地層が露出しており、継続的に発掘が行われたことが恐竜県となったゆえんだ。 福井の恐竜は、1階の展示室だけでなく新館の吹き抜けでも見ることができるシンボルモニュメントだ。さらにこの夏は、ロイヤル・ティレル古生物学博物館から「ブラックビューティ」の実物頭骨も特別に展示される。ぜひ訪れたい。
写真:齋藤誠一 編集&文:井上倫子