地元の家具メーカー〈飛驒産業〉は、採集した間伐材を家具製作に利用したり、枝葉をエッセンシャルオイルや植物活力液の材料として活用したりしている。

〈特定非営利活動法人 活エネルギーアカデミー〉は、そんな現状を変え、地域を活性化させるべく2014年に始動した。地域の山林に必要な間伐を活動参加者で行い、採集した材木は高山市と協働で定期的に周回させる「積まマイカー」にのせて市内の加工場へ。

「積まマイカー」が材木の集積所を回る定期物流システムや、地元の飛驒信用組合でEnepoを決算できる仕組みの構築がプロジェクトを成功に導いた。

その対価には地域の協賛店で使える地域通貨Enepoがもらえる。森林の価値が市外に流出することなく、地域内でお金と仕事が循環していく仕組みだ。間伐した材を建築や家具作りに積極的に使う地元企業も徐々に増えている。

WOODHOPE（青森県）

『世界伐木チャンピオンシップ』は、「伐倒競技」「ソーチェン着脱競技」「丸太合わせ輪切り競技」「接地丸太輪切り競技」「枝払い競技」の5種目で競う。

チェーンソーの国際大会で日本人女性が金メダル。 林業の技術や安全意識の向上を目的に設立された、チェーンソーの腕前を競う国際大会『世界伐木チャンピオンシップ』。2023年に開催されたエストニア大会では、日本人女性が種目別の金メダルを初獲得した。青森県青森市を拠点に森林素材生産を行う〈WOODHOPE〉の岡田望さんだ。

岡田さんは「丸太合わせ輪切り競技」で金メダルを獲得。

14年に青森で開催された日本大会を観戦した際「スポーツのようでかっこよくて、チェーンソーを扱ってみたいと思った」と、未経験ながら林業界へ飛び込む。初めてチェーンソーに触ったときはエンジンすらかけられなかったが、今では世界で競える腕前に。 今後は種目別だけでなく、総合の入賞も目指す。「海外では子どもが将来就きたい職業に林業が入っているんです。大会を通して、日本の若い世代にも林業やその魅力を知ってもらえるきっかけをつくれたら」と意気込んでいる。

団らん処 和菜屋（福岡県）

Photo：Keita Sawa(03)

林業と高齢者の課題に向き合う惣菜店。 高齢化が進む北九州市の団地の一角に、高齢者と林業の課題に向き合う惣菜店〈団らん処 和菜屋〉がある。創業者の三村和礼さんは元作業療法士。高齢者が抱える食事調達や社会的孤立の問題に触れ、「健康的な惣菜を提供したい」と考えていた。 その思いに賛同したのが大分県日田市の〈田島山業〉。同社では一般的に商品価値がないとされる丸太（林地残材）を大量に保有していた。そんな両者が出会うことで生まれたアイデアが、未利用だった材木を活用して高齢者に優しい惣菜店を作ること。

店舗設計は北九州市を拠点とする建築家の田村晟一朗が手がけた。同じ団地内には内装に林地残木を使った〈デイサービス和才屋〉も誕生している。北九州市小倉北区金田1-1-6 UR金田一丁目団地1F。

カウンターや床、天井の一部には林地残材を使用。車椅子でも楽に移動できるようカウンターには緩いカーブをつけた。高齢者が安心して集え、健康的な食事ができる場として地域に貢献している。 ●情報は、FRaU2024年8月号発売時点のものです。