一棟貸しの宿、地域通貨、惣菜店…「森林の課題」に向き合う日本各地の取り組み[FRaU]
適切に手を入れることで、健やかな森林を保とうとする持続可能な森づくり。日本でも、自分が暮らす地域の森を元気にするための取り組みが各地で始まっています。建築やデザイン、食やレジャー、教育など、そのアクションはじつにバラエティ豊かでユニーク。その根底には、森と共生することで自然も自分たちの暮らしも豊かにしたいという思いがあります。
MAISON SHIRO(北海道)
人間ではなく、森の都合に合わせた一棟貸し宿を建設。 自然の恵みを最大限に生かしたものづくりを行うコスメティックブランド〈SHIRO〉。2024年4月、北海道長沼町に一棟貸しの宿泊施設「MAISON SHIRO」をオープンさせた。効率性を重視し、輸入資材に頼りがちな“人間都合”の設計・建築とは違い、同施設はすべてが“森都合”。
隣接する「シロラボラトリー」では、地元の森林から採れた間伐材や枝葉、笹などを天然の湧水を用いて蒸留。宿泊者は製品になるまでの工程の一部を見学できる日も。大人2名素泊まり13万円~。北海道夕張郡長沼町加賀団体(新千歳空港から車で25分)。
柱や壁に使われているのは、持続可能な森づくりを実践する林業従事者から直接購入した間伐材。解体後も再利用または土に還せるよう接着剤の使用を控え、余った木材で家具を製作、さらにその端材をドアノブなどに活用。
部屋には宿泊時に食べきれなかったパンや未使用の歯ブラシなどを持ち帰るためのランドリーバッグを用意するほか、できる限り廃棄物を生まない工夫が凝らされている。柱やはり、床、造作家具、すべての要素を通じて、森が未来に与える可能性を訴えかける。
飛驒高山間伐通貨 Enepo(岐阜県)
森林資源で地元経済の活性化を促進。 岐阜県高山市は人口8.3万人の小さな自治体。市内に広がる森林からはたくさんの薪が作れるにもかかわらず、暖房用の灯油を毎年24億円分以上購入している。家具や建築にも輸入材が多く使われており、間伐施業で搬出される森林資源は地元でほぼ活用されていない。