大阪近代建築を生かす〝街の再生〟 at 堺筋 「五感」と「パンとエスプレッソと」の経営者対談
経営哲学と近代建築への愛
山本氏は不動産デベロッパー出身。飲食業への転身後、東京表参道で成功を収めた実績を引っ提げて大阪へ戻り、この建物との運命的な出会いを果たした。「歴史的建築の中で現代的な体験を提供することが、ブランド価値を高める」と語る山本氏。彼がこの建物に着目したのは、大阪の出身者として地元の魅力を再発見する中で、この建物が持つ可能性を感じたからだ。
人気メニューと空間デザイン
「堺筋トースト」は、この店舗限定のデニッシュ生地を厚切りにして焼き上げた逸品で、オーガニックハチミツをたっぷりとかけて味わうのが定番だ。また、2カ月ごとにメニューが変わるアフタヌーンティーや、焼きたてパンが食べ放題のランチセットも人気を集めている。 カフェ内には、かつて銀行の金庫室だった部屋を再利用したドライフラワーで装飾されたスペースがあり、訪れる人々に非日常的な時間を提供する仕掛けが施されている。これにより、訪れるたびに新鮮な驚きが体験できる空間を演出している。
近代建築を活かす経営者の哲学
対談では、浅田氏と山本氏の共通する経営哲学が明らかになった。それは、単なる店舗運営ではなく、「地域の価値を向上させる」という視点だ。 浅田氏は、「歴史を引き継ぎながら、現代に新しい価値を加えることが重要」と述べ、山本氏も「建物そのものがブランドの一部。これを守りながら次世代に繋げることが私たちの責任」と語る。 両者の違いは店舗のスタイルに現れている。「五感」は持ち帰り中心のスイーツブランドとして展開しつつ、北浜本館を拠点に据えている。一方、「パンとエスプレッソと」は店内飲食を中心とし、訪れる人々に空間と味覚の両方を楽しませるスタイルだ。
大阪の街と共に未来へ
浅田氏は、大阪・関西万博を視野に入れた新たな商品展開を検討中で、「地域の素材を生かした菓子作りをさらに深化させたい」と意欲を見せる。一方、山本氏は国内外での店舗展開を視野に入れ、「建物と共に成長するブランドモデルを模索していきたい」と語る。 「五感」と「パンとエスプレッソと」は、それぞれ異なるアプローチで大阪の魅力を引き出している。歴史を受け継ぎながら進化を続ける両ブランドは、これからも大阪の街に新たな価値を提供し続けるだろう。 <取材協力> ■五感/(北浜本館)大阪市中央区今橋2-1-1 新井ビル ■パンとエスプレッソと堺筋倶楽部/大阪市中央区南船場1-15-12 堺筋倶楽部1F