水戸に学びの多様化学校 来春、茨城県内初 不登校児童を支援
不登校の児童に学習や体験の場を提供する特例校「学びの多様化学校」が来春、茨城県水戸市に開校することが6日、関係者への取材で分かった。文部科学省が全ての都道府県への設置を目指しており、県内では初めて。体験学習型を重視した特別なカリキュラム編成や地域との連携などを通し、不登校の児童と保護者を支援する。 開校するのは学校法人リリー文化学園(大久保博之理事長)が運営する「リリーガーデン小学校」。同学園が運営するリリーベール小(同市藤が原)の分教室となり、学童保育などが入る複合施設「YAMANE&LILY SQUARE」(同市全隈町)の2階を活用する。同学園によると、すでに同省から実施計画書の承認を得ている。 同学園によると、年間30日以上の欠席があったり、不登校傾向のある小学1~6年生の児童を募集する。定員は60人程度を想定。教職員は校長を含め6人となる計画だ。教育課程については同省と協議中で、来年2月ごろ正式に決定する見込み。年間の授業料は調整中という。 「学びの多様化学校」は、文科大臣の指定を受け、不登校児童生徒の実態に配慮した特別な教育課程を編成する。従来は「不登校特例校」と呼ばれ、2005年に制度化された。23年8月に現在の名称に変更された。現在までに全国で35校が開校し、県内では同校が初めてとなる。 教育課程では「アウトドアとスポーツ」「アグリカルチャー」「地域とキャリア教育」の計三つの体験学習型の新設教科を設定する。一般的な公立小と比べ、国語や算数などの授業数を減らし、削減分を新設教科に充てる。 新設教科は国語や算数などの教科学習に関連付けて行う。キャンプの授業で気象を観察する理科の要素を取り入れたり、農業体験で収穫した野菜の個数を記録して算数の学習を含ませたりすることで、従来の教科学習と両立させる。 県教育委員会は同日までに、同学園から学校設置のための学則の変更届を受理した。県教委私学振興室の担当者は「県内第1号として積極的に取り組みを進めてほしい」とする。 不登校児童生徒数は全国的に増加し、早急の課題となっている。文科省の調査によると、昨年度の小中学生の不登校児童生徒数は全国で過去最多の34万6482人。県内では12年ぶりに減少傾向に転じたものの、7987人と高い水準で推移している。 国は学びの多様化学校について、小中高を含め27年度までに全都道府県、将来的には300校の設置を目指す。 同学園の大久保理事長は「私立の柔軟性を生かし、不登校の増加という社会課題の解決に取り組んでいきたい」と話している。
茨城新聞社