アメリカ大統領選の明暗を分けたのは“ポッドキャスト”だった? ニューヨークZ世代が独立型メディアの台頭を考える
◆メディアのあり方が問われた大統領選となった
ポッドキャスト番組のリスナーの多くは、ジム・ブロ、すなわちジムに通って体を鍛えている男たちではないか、という指摘がありました。「男は強くたくましくあるべき」という、伝統的な“男らしさ”の復権が若者たちに響いて、トランプ勝利につながったと考えられています。しかし、この動きが必ずしもいいことではないという意見も出ました。 ノエ:たとえば、アンドリュー・テイトのような、多くの若い男性に強い印象を与えるインフルエンサーがいるよね。彼が主張しているのは、男は「家庭の長であるべき」で、「強くて体格がよく」て「背が高い」ってこと。 だから、みんな彼に惹かれるんだ。その人柄に惹かれるから、彼がいうことに耳を傾けるようになる。彼が「女性は家のなかにいるべきだ」と言えば、それをみんなそのまま鵜呑みにする。 メアリー:彼らは本当に面白いからね。その影響でトランプに投票しようという気になるのは、そんなに難しいことではなかったと思うな。だけど、笑ってばかりはいられないよ。あれからネットでは女性に対して「お前の身体のことを決めるのは俺だ」みたいな、嫌なジョークが出回っている。 それってまるで、「言いたい放題で構わない」と強気になっているみたい。このギャップをどう埋めればいいかわからない。きっと、分断はなくならないんだろうなって思ってしまう。 「お前の身体のことを決めるのは俺だ」というのは、女性たちが人工妊娠中絶の権利を取り戻すためのスローガンとして使っている「私の身体のことを決めるのは私自身」というのをもじったもの。メアリーはこうした男たちの強気で女性蔑視とも言える態度が、今後レイプなどの性犯罪の増加につながるのではないかと不安を感じています。 こうした男性中心主義とも言える価値観を持つ男たちのゆるやかなコミュニティは、「マノスフィア」と呼ばれています。「ジョー・ローガンやエイディン・ロスのポッドキャストが、マノスフィアのメッセージを育んできたとも考えられています。その背後には、男よりも女の権利のほうが優先されていると感じる男性の不満や怒りがあるとも指摘されています」とシェリーは解説。 今回の選挙はある意味、伝統的な男女の役割や価値観を重視するマノスフィアと女性の権利を打ち出すフェミニズムがぶつかって、マノスフィアが勝ったとも言えます。もちろん、すべてのポッドキャストがマノスフィアなわけではなく、フェミニズムのポッドキャストもあります。なかには、政治はまったく関係ない、スポーツやエンタメのポッドキャストも数多く存在しています。 一方で、ここ数年人気が急上昇してきたポッドキャストがこれほどの力を持つようになり、選挙結果にここまで影響を及ぼすとは、ほとんどのアメリカ人は予測していませんでした。 「既存のメディアとは違い、ほとんどファクトチェックされないポッドキャストに対しては、フェイクニュースや陰謀論の温床になっているという懸念も出てきています。そういうことも含めて、メディアのあり方の激変がはっきりと表れただけでなく、結果にもつながった大統領選だったと言えます」とシェリーはコメントし、話題を締めくくりました。 (interfm「NY Future Lab」2024年11月27日(水)放送より)